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「降伏は絶対にありえない」「いま、一番の壁は言葉です」 キエフから日本へ避難した家族が語る“ウクライナのリアル”《国境付近では人身売買の危険も…》

「降伏は絶対にありえない」「いま、一番の壁は言葉です」 キエフから日本へ避難した家族が語る“ウクライナのリアル”《国境付近では人身売買の危険も…》

2022/03/27
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そもそも日本に来るだけのお金の工面は難しい

――日本での生活はどうですか?

オクサナ 一番はやはり言葉の壁ですね。私たちの世代だとソ連時代のロシア語が第一言語で、第二外国語がウクライナ語だったんです。ロシア語とウクライナ語しか習っていないので、英語が話せない人も多いんですよね。子どもたちは小学校から英語の授業があって、ずっと英語の勉強をしているから良いのですが。

大学生のエレナさん(右)と中学生のナタリアさん ©文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

エレナ 物価も高いですね。ウクライナ人の平均年収は日本円で約45万円です。我が家はパパとママが頑張ってくれて月収が500ドルだったのですが、それでもとても日本では生活できません。今回も燃料の高騰があったこともあり、飛行機代だけで1人20万円近くかかりました。

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オクサナ PCR検査代も高額でした。それにホテル代なども併せてトータルで100万円近くはかかったと思います。これから生活することを考えると、何とか仕事をさせてもらえると助かります。

 今回、我が家はたまたま姉が資金面を援助してくれたから来日できましたが、普通のウクライナ人にはこんなお金は払えません。受け入れに手をあげてくれたことはとてもありがたいのです。でも、そもそも日本に来るだけのお金の工面は難しいというのが正直なところです。

ロシア側に誘拐された話や、人身売買に巻き込まれたという話も

――戦争中の都市から着の身着のままで家を出てきている方にとっては、確かに大変かもしれません。

オクサナ そういう意味では隣国のポーランドに出られればいいのでしょうが、ポーランド側の受け入れも限界になっている。いま、ポーランドでは難民の過ごす場所が足りず、スーパーや大きなデパートの床にシートなどを敷いて、そのうえで子どもたちが過ごしていると聞きます。

戦闘地域から避難する民間人 ©getty

エレナ ウクライナ国内から退避したい人はたくさんいるのですが、不安も大きいんです。地元のメディアではポーランドなどの国境まで出向いた結果、あまい言葉に誘われて白人の子どもが誘拐された話や、人身売買に巻き込まれたという話もでています。女性が性犯罪の被害にあう事例も出ていて、ユニセフでもそういった事案については注意を呼びかけている。

 そんな背景もあって疑心暗鬼になっている今だと、「日本が受け入れてくれる」と言われても、我が家のように実際に親戚が住んでいるといった特殊な例以外では不信感を抱く人が多いと思います。

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