また、オンラインカジノについても事実上の国内賭博であるとして、複数の事件で運営者のみならず利用者まで刑事事件に巻き込まれています。端的には「海外に見せかけているが、事業の本体は日本に置いてあって日本の違法カジノである」というケースが存在するわけで、ウェブ上の賭博を想定しない現行法制度との関係では、反社会勢力に収益が流れているという可能性も含め、オンラインカジノは非常に微妙な「日陰の存在」です。
オンラインカジノの性質にもよりますが、本件が注目を浴び、探られることは、決済代行会社経由で数千万円を払ってでも避けたい状況だった可能性も否定できません。
実は消費者問題に多少関わることのある当職としては、決済代行会社に関する責任追及も、思い浮かばないではありませんでしたが、国税徴収法上の差し押さえを行うという点については、全く思いつきませんでした。
中山弁護士のどこが「スゴい」のか?
決済代行業者に圧力をかけることに慣れているのは、消費者問題を担当することの多い、言わば反権力側の弁護士です。他方で、国税徴収法に詳しいのは行政、すなわち権力側の仕事が多い弁護士です。両立しないことが多い能力ですので、双方に通じた弁護士は「両利き」のような貴重な存在です。
その2つの方法を組み合わせた、そして、決済代行会社の口座に資金が残っており、カジノに流れてしまう前に迅速に抑えた、代理人の功績はその点に集約される、という見方があります。実際そう指摘する弁護士も少なくありません。
もっとも今回の中山弁護士の「鬼手」には、実はリスクもあります。
というのも国税徴収法を使った差し押さえは、本来法律が想定している、滞納者の口座による滞納税の差し押さえとは本質的に前提を異にします。わずか数万円の滞納税差し押さえの建前で、実際には税金と関係ない第三者口座に存在する数千万円の資金を凍結する、というのは、かなり大胆な行動です。
決済代行業者の立場からすれば、「不当」という見方もできます。法的には、行政訴訟で不当な超過差し押さえについて争えば、帰趨は予想できなかったのではないでしょうか。
報道によれば代理人は「容疑者と業者は委任契約を結んでいて、公序良俗に反する取り引きをしていると判断した」としていますが、公序良俗違反というのは、個別具体的な法律での処理ができない場合にむしろやむを得ず使う理論であり、一筋縄で当てはめられる性質のものではありません。相当な反駁が考えられます。
そうしたリスクを踏まえたうえで、中山弁護士は、「決済代行業者は恐らく法的に反駁してこない」という点まで想定し、強気な方法に出ていると考えられます。