“パワハラ問題は二の次”という姿勢
その後、松井氏の指示により藤田幹事長がパワハラ問題の担当者に任命され、5月12日に社労士を交えた森氏へのヒアリングが行われる。その様子を森氏はこう振り返る。
「堀井氏の電話の録音を聞かせると、パワハラにあたらないと社労士の先生はおっしゃいました。逆に、私が音声データの公開に言及すると、『あなたが党を脅迫していることになりますよ』とまで言われたんです。私は納得できずに『政治家の発言は市民にも知る権利があるはずです。それを公表することがなぜ脅迫になるんですか』と問いました。そもそもパワハラに当たらないのであれば、公表しても問題はないはずです。これに対する答えはなく、藤田幹事長も黙ったままでした。この時、この政党にはこれ以上の対応は望めないな、と諦めました」
堀井氏への処分などは現在に至るまでなにもない。国会答弁でも登壇をしている。党の対応に不満を感じている森氏は、そもそも日本維新の会にパワハラ相談窓口がないのもおかしいと主張する。
「自民党や立憲民主党にはパワハラ相談窓口が設けられています。しかし、日本維新の会にはそういった窓口は存在しない。『作ってください』と要望しても、『夏の参院選後に検討』という答えでした。“パワハラ問題は二の次”という姿勢は時代に逆行していますよ」
森氏は今の維新には“維新スピリッツ”が感じられないとも批判を展開した。
「私が維新に入ったのは『古い日本の政治慣習を改革し、国民目線のクリーンな政治を目指す』という維新スピリッツに共感したからです。でも、3年間市議会議員として活動して感じたのは、そういった維新スピリッツをもった議員が少ないという事。組織が拡大してしまった弊害か、選挙が第一という議員が増えてしまったのだと思います。今回のパワハラの件で『市民のために』というのは上辺だけのきれいごとでしかないんだと気づきました」
堀井氏と岸口氏に事実確認を行ったところ、両者から文書で回答が寄せられた。
森氏の証言と食い違う堀井氏と岸口氏
まずは堀井氏の回答だ。森氏に対し、岸口氏への選挙応援を依頼し、それを拒めば「維新の議員としてはいられない」と発言したことについて以下のように回答した。
《兵庫維新の会組織強化本部長である私が、その職務の一環として森勝子議員に対し、参院選における岸口みのる氏候補への選挙応援を依頼したことは事実です。
しかしながら、かかる応援要請は、兵庫維新の会に所属するすべての特別党員に対し行ったものであり、その性質は業務上の依頼の域を出ません。このことは、森勝子議員にたいしても同様です。
(発言については)ご指摘のような発言はしておりません》
4月3日に堀井氏が「(自分に歯向かってきたやつは)僕の目の前におれへんようになった。要するに全部除名してきた」と発言したという森氏の主張に対しては「ご指摘のような発言はしておりません」。
森議員がパワハラ被害を訴えていることに対し見解を聞くと、こう回答した。
《同議員ご指摘の発言があったとの認識は、一切ございません。
同議員の事実誤認に基づく不当な非難であり、議員としての成長を長年側で支え苦楽をともにしてきたことを振り返り、非常に残念に思っております。
本件につきましては、現在、日本維新の会が事実関係を正式の調査しており、その調査結果は近日中に公表されると聞いております。
同議員の個人情報、プライバシーにも係わる事柄ですので、現時点で私ができるコメントは以上が限界であること、ご理解ください》
岸口氏にも、2019年の統一地方選挙で森氏に怒鳴ったこと、2021年の県知事選挙でタコなどが入った段ボール箱を市民から受け取ったこと、および森議員がパワハラ被害を訴えていることの見解を聞いたところ、《ご指摘のような事実はありません》と回答した。
また、岸口氏の回答には下記のような一文が添えられていた。
《選挙を控えた大切な時期にあまりにも唐突で事実ではないご指摘に加え質問の意図が理解できず、大変困惑しております。正確な情報収集、取材をされますよう期待します》
森氏はパワハラ被害を訴えるものの、堀井氏・岸口氏との間には大きな見解の違いがあるようだ。