このところ、訪日外国人の急増ばかりが注目されているが、実は日本人の海外渡航者数も増加している。2017年の海外渡航者数はおそらく1800万人近くに達し、2016年よりも約5%も増えたことになる。
この背景としてはLCCをはじめとした新規就航路線が着実に増加し、海外への航空券やツアーの金額が低下したことが挙げられる。
さて、こうしたなか、2018年に特に行くべき注目の国・地域はどこなのだろうか。
ロシアもビザなし渡航の時代に
2016年末に東京と山口で行われた日露首脳会談は領土問題について空振りに終わったが、旅行者目線でみると、日露関係には大きな前進があった。これまでメジャーな国のなかでは、ロシアとブラジルのみが短期の日本人旅行者に対しても事前のビザ取得を課していた。ところが2017年8月から、極東のウラジオストク空港・港から出入国し、沿海州に滞在する場合にかぎり、事前にサイトで登録し、入国時に8日間有効のアライバルビザが無料で取得できることになった。
電子ビザ - 在日ロシア連邦大使館
http://electronic-visa.kdmid.ru/index_jp.html
ウラジオストクへは成田から直行便で2時間あまり。航空券も安いときには3万円台で往復できる。また、S7航空はワン・ワールドに加盟しているので、JALマイレージバンクの20000マイルを利用して日本~ウラジオストクを往復することも可能だ。
2018年1月1日からはハバロフスク・サハリン・カムチャッカでの出入国に対してもこの電子ビザが適用される。2018年4月からはS7航空が成田からバイカル湖に近いイルクーツクと、ロシアのほぼ中央にあたるノヴォシビルスクにそれぞれ直行便を就航させる。これらの都市は、モスクワやサンクトペテルブルクなど、観光の目玉となる都市同様に事前のビザ取得が必要となっている。
2018年に開催されるサッカーワールドカップ観戦のためにロシアを訪れる人はビザ取得が免除される。ただし、チケット購入後に「FAN ID」とよばれる申請を行うことが条件となっている。また、ロシアのアファネシエフ駐日大使は2017年12月21日、30日以内なら日本人はビザなしで入国できるようにすることを検討中であると述べた。時期は明らかになっていないが、遠くない将来にロシア旅行が気軽にできる時代がようやくやってきそうだ。
ちなみに北方領土についてもツアー催行の動きがある。
北方領土ツアー、「旅券・ビザなし」で交渉中、来夏目標に
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=79831
「あの」サウジも観光が可能に?
2017年11月、サウジアラビアの観光行政当局の責任者が2018年、外国人への観光ビザの発給を計画していることを明らかにした。これまでサウジアラビアは一部の例外をのぞき、観光ビザを発給してこなかった。英語の旅行ガイドブックロンリープラネットにはビザ取得について「very very difficult」という実感たっぷりの表記があったことを思い出す。まだ詳細は明らかになっていないが、当然のことながら観光客の受け入れを開始した直後が、まだ「観光客ずれ」していないだけにおすすめだといえる。まずは具体的な続報を待ちたい。
中東なのにルーヴル美術館?
中東で華美なイメージのある都市といえば世界一高いビル、「ブルジュ・ハリファ」に代表されるドバイを想起する人が少なくないだろう。しかし、いま熱いのは同じアラブ首長国連邦のアブダビである。2017年11月11日にルーヴル美術館初の海外別館であるルーヴル・アブダビが開館した。このルーヴル・アブダビのあるサディヤット島がとんでもないところなのだ。おもな建物と担当した建築家は次のとおり。
ルーヴル・アブダビ(ジャン・ヌーヴェル)
グッゲンハイム・アブダビ(フランク・ゲーリー)
アブダビ海洋博物館(安藤忠雄)
アブダビ・パフォーミング・アーツセンター(ザハ・ハディッド)
ザイード国立博物館(ノーマン・フォスター)
と、世界中の超有名建築家ばかりを綺羅星のごとくそろえている。
2017年にクリスティーズの開いたオークションにおいて過去最高額の508億円で落札したレオナルド・ダ・ヴィンチの肖像画「サルバトール・ムンディ」もルーヴル・アブダビに所蔵されることが決まっている。ルーヴル美術館の名前貸しのライセンス料などを含めて、30年契約にアブダビは1400億円以上を支払うという。もちろん建築費はこれとは別にかかっている。ちなみに入館料は60ディルハム(約1860円)であり、元手を考えれば超格安といえるだろう。