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死刑囚の作品展に自らの境遇や事件を茶化すような作品を応募

「死刑囚の作品展に毎年のように絵や詩を応募していました。ところが、作品の大半が自らの境遇や事件を茶化すような代物ばかりだったのです」(同前)

 たとえば「死刑囚表現展2017」では、「あしたも、がんばろう。」と題した絵画を出展。人気アニメ「アイドルマスター」を点描画で再現した模写かと思いきや、よく見ると、その点は点ではなく、全て「鬱」の文字だった。

 別の年には、新海誠監督のアニメ映画「君の名は。」をあろうことか、「君の縄」ともじった題の作品を出展。主人公とおぼしき登場人物の首に縄を巻きつけ、自分の行く末とリンクさせていた。

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送検時の様子 ©文藝春秋

 さらに「表現展2018」には、〈人生ファイナルラップ〉と題した辞世の句ならぬ“辞世のラップ”を投稿。〈親は力で支配しがち/屈辱に耐える毎日〉と韻を踏みながら母親に極端な躾を受けた末に疎まれた半生を振り返り、そうした来歴が犯行に駆り立てたことを示唆しつつ〈原因不明皆もやもや〉と犯行の真の動機は伏せ、〈絞首刑かかって来いや/首に食い込む錆びたワイヤー/迎えられないニューイヤー〉と挑発的な文言を続けていた。

 最後まで反省の色が無かった加藤死刑囚。〈かかって来いや〉と綴った絞首刑は執行されたのだった。