長尾氏は、アマゾンとの価格交渉の責任者であり、現在の混迷を招いた張本人。「いまどき珍しいワンマン社長がいる限り正常な企業ガバナンスは働かない」(同前)と言われており、目玉人事も空振りに終わるかもしれない。
「これじゃ楽天じゃなく『落胆』だ」
日本郵政(増田寛也社長)幹部らが楽天グループ(三木谷浩史会長兼社長)株の値動きに神経を尖らせている。郵政関係者から「これじゃ楽天じゃなく『落胆』だ」と怨嗟の声が漏れてくる。
郵政が楽天と資本業務提携に踏み切ったのは昨年3月のことだった。中国のゲーム大手、テンセント(馬化騰CEO)、西友(大久保恒夫社長)などとともに楽天の2423億円余にのぼる第三者割当増資を引き受けたもので、うち郵政は約1500億円と最大の資金を拠出。楽天発行株の8.32%を握る、三木谷家に次ぐ実質第2位の大株主に躍り出た。引き受け価格は、1株1145円だった。
ところが楽天の株価は、今年に入ってからほぼ下落の一途。6月20日には一時、年初来安値となる582円にまで値を下げ、郵政の引き受け価格の半値に急接近する事態に陥った。
保有有価証券の時価が取得原価の50%以下に目減りすると、会計上で減損処理を迫られる。仮に楽天の株価が572.5円を下回れば郵政は少なくとも750億円の減損損失の計上を余儀なくされるわけで「増田社長ら首脳陣の顔色は一様に蒼ざめていた」(周辺筋)らしい。
郵政にはトラウマがある。豪州の物流大手、トール・ホールディングスの巨額買収のことだ。2015年5月、6200億円もの巨費を投じて買収したものの、経営の立て直しに失敗。4003億円の減損と674億円の事業売却損の計上を強いられた挙げ句、わずか7億円でファンドに叩き売るハメとなった。
楽天への出資を巡っては、当時の郵政に政府資本が約6割残っていたため、「事実上の国費による楽天救済ではないか」とも指摘されていた。
11月以降、楽天の携帯電話事業で最大の売りだった「0円」プランが名実ともに廃止される。投資家の間では株価下落は「これからが本番」との見方も少なくない。
郵政内部ではすでに戦犯探しが始まっているという。
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「丸の内コンフィデンシャル」の全文は、「文藝春秋」2022年9月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
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