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コール・アンド・レスポンスは「クーコール」に似てる?

 ライブやコンサートで演奏者からの問いに観客が一斉に答える、ある楽曲で観客が一斉に決まった合いの手を入れる、などのコール・アンド・レスポンスはサルのクーコールにとてもよく似ています。コール・アンド・レスポンスも、特定の情報を伝達しているわけではなく、やりとりすることそのものが重要なのです。

 観客のレスポンスが思ったよりも小さかったりすると、もっと!と再びコールされたりするところも共通しています。クーコールのように一対一ではなく、姿が見えない森のなかでもないのですが、「お約束」にのっとったやりとりは演奏者と観客の連帯感を高めます。また大勢の観客が一斉に反応することで、観客同士の連帯感も高めます。

 コール・アンド・レスポンスによって、ライブやコンサートで演奏者のパフォーマンスを受動的に鑑賞するだけではなく、自らもそのパフォーマンスの参加者として能動的に鑑賞する姿勢が生まれます。だとすれば、ライブやコンサートでの楽しみはさらに大きくなるでしょう。

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 ゼミ生の小倉詩緒里さんとの研究で、ライブパフォーマンスにおける観客の一体感の推移について検討しました。時間経過に沿って分析すると、ライブ中に観客が感じている観客同士やパフォーマーとの一体感は一定ではなく、さまざまな局面に応じて強弱があることがわかりました。

 特に一体感を強く感じている場面には、掛け声やペンライトを振るなど観客によるアクションが関わっていることが示唆されました。また、激しく動く時だけでなく、バラード曲の一部を会場中で一緒に歌っていた時も一体感が強くなっていました。一方で、観客の一体感が弱い場面とは、個別にファンサービスを受けていたり、歌ではないトークを聞いている時など、観客がそれぞれ受け身的にパフォーマンスを楽しんでいるところでした。

 演奏者からの働きかけは、観客の反応によって強化されます。強化された演奏者の働きかけに、観客がさらに熱く反応します。まさにおたがいの相互作用によって、ライブやコンサートでの一体感は高まっていきます。そんな「推し」と自分の共同作業としての「コール・アンド・レスポンス」は、群れで生きるサルのクーコールにその起源を見いだすことができるのです。

©iStock.com

映画に向かって「応援する」という参加

「推し」と自分の共同作業としてのコール・アンド・レスポンスについて見てきましたが、そのような共同作業が必ずしも生身の人間とだけ成立するわけではない、という例をあげましょう。「推し」が2次元であってもコール・アンド・レスポンスという共同作業が成立するところ、それが「応援上映」です。

「応援上映」というのは、映画の上映中に、観客が色とりどりのペンライトやサイリウム、応援うちわ(これはジャニーズのコンサートで使われるような、「推し」を応援するためのうちわです)などを振って、大きな掛け声をかけたり歓声をあげたりすることが奨励されている鑑賞形態のことです。それをしている対象は映画ですから、当然、対象からの反応はありません。色鮮やかに輝く灯りや気合の入った声援も、スクリーンの映像に届いたらはね返るばかりです。

 これまで長いあいだ、映画という娯楽は静かに鑑賞するものとされてきました。ところが応援上映はそのような概念を覆しました。盛りあがるシーンでは観客みんなで歓声や声援をあげます。時には登場人物のセリフにツッコミを入れたり、劇中のセリフをみんなで唱和したりもします。ペンライトやサイリウムを持ちこんで振れば、ライブやコンサートのように映画を楽しむこともできます。