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 ある市の支所職員は「マイナンバーカードの取り扱いについては、本庁で研修を受けたわけではありません。マニュアルを読み込んで、その通りにやっています。分からなかったら本庁の担当部署に電話で聞きますが、それでもなかなか理解できないことがあります。本庁の各課は担当が分かれていて、それぞれのジャンルを専門にしている職員がいます。一方、人数の少ない支所では1人で幅広い仕事をしなければならないので、専門的な内容になると難しいのです。ただ、市民にとっては本庁であろうが、支所であろうが、同じ市職員です。言い訳はできません」と話す。

 マニュアルが全国の市区町村に行き渡る。細かいところまで読み込んで、その通りに手続きを進める。誤りは許されない。マニュアルというデジタル行政の金縛りが全国の自治体を覆いつつあるように見える。

 しかも、「申請書が間違えそうになるほど多くて辟易しています。パスワードの再設定にも必要、カードの一時紛失にも必要。住民や事務の負担を減らそうという施策でもあるのだから、せめて申請書は簡略化してほしい」と語る職員もいる。支所では「10年保存となると、そうでなくても書類の保管場所に困っているのに、倉庫が満杯になってしまう」と困惑していた。

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さらにマイナンバーカードが抱える“壊れやすさ”という問題点

 そうした課題がありながらも、マイナンバーカードを使った手続きは増えている。ところが、肝心のカードが「壊れやすい」という指摘がある。

「窓口のパソコンで処理しようとカードリーダーに入れても、たまに読み取れないことがあります。スマートホンのNFC(近距離無線通信技術)で試してもダメ。そうした人の話から類推すると、ポケットなどに入れていて、カードのICチップに“格納”された電子証明書が壊れてしまったという場合もあります。普通のクレジットカードと同じなのに脆弱だなと思います」と、ある自治体の職員が話す。

「裸のまま財布に入れていたら印字が汚くなってしまった」と、住民に言われた職員もいた。マイナンバーカードの表には、住所や姓が変わった時に変更内容を記載する追記欄がある。10年も使うのに、ここが汚れてしまうのだ。

 取り扱いに神経を使う職員は多いようだ。「マイナンバーカードを使った手続きの際に壊してしまわないか不安で、預かるのが怖い」と話す人もいる。

「従来の手続きで預かっていたのは運転免許証のコピーを取る時ぐらいでした。しかし、マイナンバーカードは“重さ”が違います。基本4情報(氏名・住所・生年月日・性別)や電子証明書が記録されているだけでなく、マイナ保険証としても使われ始めました。運転免許証も一体化される予定です。医療費助成の受給者証や母子健康手帳も統合される方向で、これほど重要な証明書が一枚に盛り込まれるのに、破損させるなど使えなくしてしまったらどうなるのか。再交付には日数もかかるのに、窓口の職員には責任が取れません。素手で触ってもいいのかと迷うほどです」