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合理性が問われるピアス禁止

 ただし「ピアス禁止」については、私自身も手放しで自由化に賛成したりはできない。

 なぜなら、ファッションや髪の色は考えが変われば元に戻せるが、ピアスのために耳などに穴を開ける行為は、不可逆的だと考えるからだ。しかも粗雑な穴あけで化膿などのトラブルにつながる例もある。

 もちろん、ファッションや髪の色同様、見栄えについての校則を一斉に廃するならその方が簡単だ。どんな格好をしても自由ですよ、なら教員は生徒を管理する必要がなくなる。

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 だが、自分の耳に穴を開けるのがOKなら、次のような、自分のカラダを故意にいじる行為も否定できないことになる。これは私自身、「よのなか科」の授業で中高生と繰り返し討論してきたテーマでもある。

 ・ピアスをするために体に穴を開ける。

 ・人相が変わるような美容整形をする。

 ・ムダ毛を薬品や機械で抜いたり、植毛したりする。

 ・ドーピングで成長ホルモンを注射する。

 ・性別適合手術をする。

 前者の2つの項目には、賛成票を投じた生徒でも、後者の2つの項目に関しては票が分かれて、反対意見も多くなる。大人でも同様かもしれない。

校則には残した方がいいものもある

 ここで道徳の授業をするつもりはない。美容整形や性転換手術をやってはいけないと論じたいわけでもない。私には性転換手術を受けた友人もいるし、火傷など事故で顔面に傷を負ってしまった人が整形手術によってプライドを取り戻す例があることも十分承知の上だ。 

 それでも、ピアスをするために体に穴を開ける行為がルールとして認められるのであれば、ここに並べた「人工的にカラダをいじる不可逆的な行為」は全部認められるはずだ。

 すべてつながっているからである。個別に道徳的に判定するわけにはいかないし、日本では宗教によって禁じられているものもない。だからこそ、「ここから先はやってはいけない」という判断は、一人ひとりの価値観に委ねられる。

 学校の校則については、一貫した評価基準の合理性が問われるだろうから、これらの項目は、公立校では禁止としておいた方がいいのではないかと私は考える。

 ピアスの穴を開けるのがいいなら、プチ整形で二重にする行為も否定できない。成長ホルモン注射も、性転換手術も、18歳で成人になってからの判断まで保留するのが得策だろう。

 校則には、残した方がいいものもあるのだ。

 以上は、私の個人的見解なので、ピアスについてはファッションの一部として許していいという考え方もあるだろう。本稿は、児童生徒と先生が議論するための1つの素材として受け止めていただければ十分である。