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 こうして戦後の日本では「早く、ちゃんとできる、いい子」をスローガンとして、産業界が望む「情報処理力」の高い労働者(ブルーカラーとホワイトカラー)を学校機関が大量生産することになった。欧米へのキャッチアップのスピードを速めるための教育政策として、正解だった面が強い。

 要するに、国家の要請によって、日本人として必要な知識と技能を備えるために、強制して学ばせる場所が「学校」なのである。

「良い習慣」を児童生徒につけるための学校

 しかし、国が豊かになり国民の経済的なレベルが上がって平和が続くと、国民の側からの要請も強くなる。市民社会からの声は、より自然な自由を求めるからだ。自由と、ルール。もとから相性が悪い組み合わせであるのは言うまでもない。それがぶつかり合うのも「学校」だ。

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 それでも、昔からあった学校でのルールには、納得できるものも多い。

 挨拶はしましょうね。礼儀正しくしましょうね。笑顔で返事しましょうね。その通りだろう。「おはよう」「ありがとう」「さようなら」は、(障がいのある子はともかく)言えないより言えた方がいいだろう。人間同士の社会がスムーズに回る潤滑剤だからだ。

 授業中、無駄なおしゃべりはいけません。もちろんだろう。教室がうるさいと先生の声が聞こえないからだ。授業を聞く「集中力」は子ども時代に身につけたい武器だし、つまらない話でも聞いているふりをする「忍耐力」も同様かもしれない。

 休み時間の廊下で「走らないでね」は、実際転んで怪我するリスクと、廊下の曲がり角や階段の上り口などで鉢合わせする危険を回避するためだ。廊下で生徒が全速力で走っていれば、給食の配膳車と衝突するような大事故も起きるだろう。さらに「手を洗いましょう」は、日本人の習慣として根付いており、コロナ対策としても役立った。

 のちに詳述するが、こうした「良い習慣」を児童生徒につける装置として学校は機能している。子どもの頃に良い学習習慣と生活習慣を身につけられれば、大人になって社会生活を営む上でも、大いに役立つだろうことは言うまでもない。

意味不明なツーブロック禁止

 しかし、そうは言っても、私にもどうにも納得できない校則がある。

「ツーブロック禁止」である。

 比較的近年になって広がった、髪型に関する校則の1つだ。

 髪型は、長年の校則の課題だ。昭和の時代から、生徒が髪を染めていいのか、金髪にしていいのかについては盛んに議論されてきた。パーマも同じく問題視され、長い髪の女子生徒には「邪魔にならないよう後ろで2つに結んでおさげにしなさい」と決めている学校もある。