3月27日、森友学園との国有地取引に関わる公文書改ざん問題について、佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われた。大きな注目を集めたが、結果として何も明らかにはならなかった。佐川氏の発言と、その後の周囲の発言を追っていきたい。

佐川宣寿 前国税庁長官
「刑事訴追を受けるおそれがございますので、その点につきましては答弁を差し控えさせていただきたい」

NHK NEWS WEB 佐川氏証人喚問全記録 何を語り、何を語らなかったのか 

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 証人喚問の焦点は、財務省の決裁文書の改ざんを誰が指示し、なぜ行われたか、そして安倍晋三首相や昭恵夫人、ほかの政治家らの影響や関与があったかどうかだった。証人喚問の冒頭、金子原二郎委員長によって改ざんの動機や指示した人物について尋ねられた佐川氏が、最初に言ったのがこの言葉である。

3月27日の佐川氏証人喚問 ©文藝春秋

 佐川氏はその後も何を聞かれても、「刑事訴追のおそれ」「差し控える」を繰り返して証言を拒否し続けた。その数、実に50回以上。結局、肝心なことは何もわからなかった。

 証人喚問では、正当な理由なく証言を拒んだり、虚偽の証言をした場合は罰せられるが、自己や自己の一定範囲の親族などが刑事訴追を受け、有罪判決を受けるおそれがある場合は証言を拒むことができる。しかし、佐川氏は明らかに刑事訴追とは関係ないことも、刑事訴追を盾にして証言を拒否している。質問に立った共産党の小池晃氏は「都合の悪いことに答えないというだけの話」と反発した(朝日新聞デジタル 3月27日)。

 佐川氏は今回、事前にかなり準備をして証人喚問に臨んだのだろう。佐川氏の補佐人を務めたのは、のぞみ総合法律事務所の熊田彰英弁護士で、過去には甘利明元経済再生相の金銭授受疑惑や小渕優子元経産相の政治資金規正法違反の弁護などの「政治家事案」を担っていた(日本経済新聞 3月28日)。

丸川珠代 自民党・参院議員
「佐川さん、あるいは理財局に対して安倍総理からの指示はありませんでしたね」

NHK NEWS WEB 佐川氏証人喚問全記録 何を語り、何を語らなかったのか

丸川珠代参院議員 ©文藝春秋

 あらゆる質問に対して「刑事訴追のおそれ」で鉄壁の防御を見せつけた佐川氏だったが、安倍首相、昭恵夫人、菅義偉官房長官、首相官邸などの関与についての質問に対しては、一転して歯切れよく「ございませんでした」と繰り返した。

 このとき、丸川氏は通常なら「ありませんでしたか」と質問すべきところを、安倍首相、昭恵夫人に関しては念押しするように「ありませんでしたね」と質問していたが、これが「誘導尋問」ではないかと批判を集めた。丸川氏は28日の参院予算委員会で「答えを誘導したのではないかという指摘があるが、そのような趣旨ではない」と釈明している(時事ドットコムニュース 3月28日)。