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 そして一心不乱にただ上流へ上流へと群れをなして進んでいくその姿は、鹿同様個々の意志あるものとは思えず、チェパッテカムイ「魚を下ろすカムイ」のつかわした食料という見方になったのでしょう。チェパッテカムイもユカッテカムイ同様天界にいて、袋の中に蓄えているヒレやエラなどを海上に撒くと、それが鮭の群れになって川に向かって行くということになっています。

当時の法律で自家消費用の鮭漁は禁止されていた

 ところで、13巻126話で、アイヌに偽装した谷垣らが網走監獄周辺で鮭漁を行って、門倉看守部長に見とがめられ、見逃してもらう代わりに鮭を要求される場面があります。その際門倉看守部長は、谷垣たちに「あんた達さ~困るよこんなところに」「こんなに色々立てちゃっても~~」と言っていますが、これは監獄の壁際に小屋を作っていることに文句を言っているのであって、鮭を捕っていることをとがめているわけではありません。

13巻126話より ©野田サトル/集英社

 実は、当時すでに全北海道で、自家消費用の鮭漁は法律で禁止されています。これは1897年の「北海道鮭鱒保護規則」によるもので、その第10条には「鮭鱒ハ自用トシテ捕獲シ又ハ遊漁スルコトヲ得ズ」となっているのです。さらに1902年には「鮭鱒ハ許可ヲ受クルニ非ザレバ捕獲スルコトヲ得ズ」と改定されます。ならば許可を取れば鮭が捕れるのかということですが、現在でも役所で手続きを行うには、書類を書いたり判子を押したりと大変面倒です。当時文字を読み書きできるアイヌは少数であっただろうということを考えても、アイヌでこの許可を得ていた人たちはわずかであろうというのは、容易にわかるでしょう。

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谷垣たちのやっていることはそもそも法律違反

 この鮭漁の禁止については、札幌学院大学教授である山田伸一さんの「アイヌ民族の川でのサケ漁はいつ禁止されたのか」という講演で、非常にわかりやすく述べられていますので、ご覧になってください。

 ということで、谷垣たちのやっていることはそもそも法律違反ですので、警察が来たら逮捕されるところですが、門倉看守部長は警官ではありませんからおそらくそんなことはどうでもいいでしょうし、自分でも鮭ぐらい捕っていそうですね。