当たり前のことなんですけど、看護師は「命に関わる仕事」だから。私たちは、患者さんの状態や訴えを自分なりに解釈して、報告する必要があります。その報告に漏れやミスがあったら、患者さんの命に関わるかもしれない。それを防ぐために、先輩たちは細かいところまで徹底して確認しているんだな、と気づいたんです。
「不謹慎かもしれませんが…」手術室で見た衝撃的な光景
――看護学校を卒業したあとは、手術室勤務の看護師、通称「オペ看」になったのですよね。ご自身の希望で配属されたそうですが、それはどうしてでしょう?
まお 手術室の実習でお世話になった看護師さんたちが優しかったので……(笑)。あとは、手術室の仕事を「もっと知りたい!」と思えたのもきっかけのひとつですね。
実習は病棟がメインで、手術室は半日しか体験しませんでした。その短い時間で手術の見学をさせてもらったのですが、「人の体の内側」を見る現場に衝撃を受けて。不謹慎かもしれませんが、初めて見る光景にワクワクしたんです。
――実際にオペ看として働いてみて、仕事内容は想像どおりでしたか?
まお 術式や手術に使う器械など、新しく覚えることが多い点では想像通りでした。でも、予想外のことのほうが多かったですね。
例えば、看護師と聞くと、患者さんとのコミュニケーションが多い仕事だと思いますよね。でもそれは病棟勤務の看護師で、オペ看が患者さんと話すことはかなり少ないんです。手術室に入ってから手術を開始するまでの短い時間に、少しお話しするくらい。
200種類以上の器械を覚えることも…「オペ看」の仕事内容
――では、オペ看はどんな仕事をするのでしょうか。
まお 手術中に「メス」などの器械を先生に渡す「器械出し」と、患者さんの状態の記録など、器械出し以外の作業をする「外回り」がメインです。手術以外の時間は、手術室の掃除や器械の滅菌作業、物品の発注などを行っています。
先ほどオペ看は「新しく覚えることが多い」と話しましたよね。それ自体は想像通りだったのですが、その量が尋常じゃなくて。手術で使用する器械は、多いときだと200種類以上になることもあります。同じ手術でも、担当する先生によって器械の種類や使う順番が変わるので、それも覚えないといけません。
もし私たちオペ看が、器械の種類や渡す順番を間違ってしまったら、患者さんの命に関わることもあります。看護師になったばかりの頃は、寝る間も惜しんで術式や器械の種類を覚えていました。
一方で、看護学校時代に学んだ知識は手術室ではほとんど使いません。患者さんとの関わりもほぼないから、「看護の知識を活かして、患者さんのお世話をしたい」という人ほど、手術室配属になるとギャップを感じてしまうようです。
――ほかに、オペ看ならではの大変さはありましたか?
まお 手術で使った器械を、手術前後にひとつひとつ数えることですかね。器械を患者さんの体の中に残してしまうと、大変なことになってしまいます。特に緊急手術のときは、1秒でも早く手術を始めないといけないから、プレッシャーがすごかったです。