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「川にヘンなものがあった。女が仰向けで…」遺体発見時の状況に隠された、殺人犯の“冷酷さ”<BOACスチュワーデス殺人事件>

「川にヘンなものがあった。女が仰向けで…」遺体発見時の状況に隠された、殺人犯の“冷酷さ”<BOACスチュワーデス殺人事件>

『消えた神父、その後:再び、BOACスチュワーデス殺人事件の謎を解く』より#2

2024/04/30

genre : ライフ, 読書, 社会

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 そして強姦後、身元がバレることを恐れて自らの手で扼殺。被害者は合わせて8人に上り、すべての遺体を群馬の山中へ埋めていたのだった。阿部定事件と同様、首を絞めながらの性行為を求めたのではないか、との噂も流れた。

 犯人は肉欲だけが目的で、被害者に対する怨恨、憎悪などはまったくなかった。ちなみに犯人はその後、絞首刑にされた。

 このケースはあまりに無慈悲で衝動的な犯行だが、それゆえに祟りを恐れるような心理が働き、遺体を土に埋めたのだろうか。8人という被害者の多さと連続性からは、犯行への依存性のようなものも見て取れる。最大の動機はやはり、犯行を続けるために、少しでも見つかりにくい「土に埋める」という処理を選んだものと思われる。

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 記憶に新しいところで、「土」のもう一つの例──。

 衝撃的事件が起きたのは2022年6月のこと。北海道帯広市の公園の熊笹が生い茂る雑木林で、「土をスコップで掘って遺体を埋めた」という事件である。

©AFLO

 犯人は妻子ある35歳の現役高校教師。女性の被害者は別の高校の現役英語教師。こちらも家庭持ちで、女性の方が12歳年上。かつて2人は同じ高校に勤務していたという。

 男の供述によると、車の中でシートベルトを使って首を絞めて殺したという。犯人は野球部の監督もしており、生徒たちから人望があったとの話もある。2人の間に何があったのか詳細はわからぬが、警察の調べに対し、「女性(被害者)との関係に疲れ殺した」と供述している。

 殺人という最悪の選択によって、被害者と自らの人生を棒に振る行動は、教育者というより人間として失格であろう。だが、遺体の処理の仕方が「水」ではなく「土に埋めた」ことは、せめて被害者にいくらかの情が残っていた証であろうか。様々なリスクを承知のうえでW不倫を続けてきたのだろうから、当人同士にしかわからない気持ちがあったとしても不思議ではない。

 一方、遺体を「水」に投げ捨てたケースである。

 私が『週刊サンケイ』記者時代に、「事件の視覚」として取材し、記事にしたもの。1974(昭和49)年、自動車整備工場を経営していた両親を殺害し、遺体に車のタイヤを括り付けて海に投げ捨てた、息子による殺人遺棄事件である。

 犯人の息子は千葉県内でトップクラスの偏差値を誇る高校に進学。両親のみならずご近所からも将来を期待されていた。ところが大学受験に失敗。予備校に通うもののなかなか結果を得られず、浪人を重ねていた。ようやく二部(夜間)の大学に合格したものの、日ごろから両親に生活態度を咎められていた。やがて、これまでの鬱積が憎悪となって自宅で両親を刺殺。遺体を市原の港に投げ捨てたのである。

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