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「死刑の当日告知は違法」という訴えに世論は冷ややか

 執行の告知に関しても、いつそれを実行するのかは明文化されていない。現状の「直前告知」は慣例的な行政運用である。ある朝、突然独房にやってくる処遇部門の警備隊から「執行」が告げられると、死刑囚は一刻の猶予も許されず、そのまま拘置所内の執行室に移動しなければならない。自ら犯した罪の代償とはいえ、過酷な刑である。

 死刑囚が収容されている舎房は毎朝、極度の緊張に支配されるため、刑務官たちはその時間帯に廊下をむやみに歩くことはせず、また告知の際も「執行」とは告げずに「所長より話がある」と連れ出す場合もあるという。死刑囚が興奮することによって拘置所内に異変が伝わり、他の収容者の心情が不安定になるのを防ぐためだ。

 その後、拘置所長から正式に執行を通達された死刑囚は遺書を書いたり、教誨師との対話などが許されるが、それも短い時間に過ぎず、そのまま刑場の露と消えることになる。

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東京拘置所内にある仏教信者などのための教誨室 ©共同通信社

 大阪拘置所に収容されている2名の死刑囚が、「死刑の当日告知は違法」として国を訴えたのは、2021年11月のことだった。

「非人道的な当日告知は正式な法に基づいておらず違法」という主張であったが、大阪地裁は2024年4月、現行の運用に問題はないとして原告側の請求を棄却した。原告側は控訴し、いまも訴訟は継続中である。

 この訴訟が報道されたとき、世論は冷ややかだった。原告死刑囚2名の実名は公表されていないが、死刑囚が生命犯であること、被害者を予告なく殺害していることは間違いない。

 そこで「死刑の非人道性を主張できるような立場ではないだろう」「なぜ自分の名前を隠すのか」という批判が巻き起こったわけだが、ここでは死刑囚の主張の是非はいったん置き、死刑の当日告知、即時執行というシステムがなぜ日本で採用されているのか、裁判の過程で明らかにされた事実関係を検証してみたい。