奨励会三段リーグでの経験が女流棋士を強くした
こう見ると、やはり最近の西山、福間が突出している。事実、全女流棋士の公式戦における対男性棋士勝率は2割5分を切っているが、福間は4割5分、西山に至っては5割勝っている。その理由を挙げるならば、もちろん本人の資質や努力もあるだろうが、奨励会三段リーグを戦った経験が大きいのではと思う。
この両者以前にも奨励会在籍経験のある女流棋士はいるが、三段リーグを戦った女流棋士は現在この2人だけだ。「三段になってからが本番」と言われるくらい、奨励会は三段と二段以下に差がある。三段リーグを突破した多くの棋士が異口同音に「初めて三段リーグを戦った時は空気の違いを感じました」と語っているくらいだ。
特に西山は三段リーグで14勝4敗の好成績を上げた経験もある。この時は次点で惜しくも四段昇段には至らなかったが、棋士になってもおかしくない実力と認められた。この実績が大きいのだろう。過去の編入試験では結果予想についてシビアな判断をする棋士も少なからずいた。だが筆者の知る限り、今回の西山についてはそのような見方はさほど聞かれなかった。
そのような状況で行われた編入試験第1局を西山は勝った。試験当日、筆者は開始時から終局まで将棋会館に詰めていたのだが、レポートの後編では現場の雰囲気がどのようなものだったかを書いてみたい。
写真=相崎修司