西山朋佳女流三冠の棋士編入試験が注目を集めている。棋士番号の若い四段5人と戦い、3勝を上げれば合格となり、史上初の「女性棋士」誕生となる。9月10日に行われた第1局では高橋佑二郎四段を破り、幸先のいいスタートを切った。
「女性棋士」と「女流棋士」の違い
まず「女性棋士」と「女流棋士」の違いについて説明しておきたい。いわゆる「棋士」とは基本、奨励会を突破してプロの四段になった者を指す。それとは別に2005年に瀬川晶司当時アマがプロ入りしたことをきっかけとして、制度化された棋士編入試験(アマチュアあるいは女流棋士として参加したプロ公式戦で既定の成績を取ると受験資格が得られる)で合格して棋士になった者もいるが、いずれの制度でも過去に棋士となった女性はいない。一昨年には福間香奈女流五冠が受験資格を得てチャレンジしたが、合格には至らなかった。よって、西山が合格すると初の「女性棋士」となるのである。
対して女流棋士は棋士とはなるための仕組みが異なる。50年前に初の女流棋士が誕生してから制度は何度か変わっているが、基本的に女流棋士になるのは棋士になるのと比較してだいぶ平易なのである。
例えば現在、女流棋士になるには日本各地に6か所(北海道、東北、関東、東海、関西、九州)ある研修会に参加し、B1クラスまで昇級すれば女流2級として認められるが、これは棋士の養成機関である奨励会では最下級の6級とほぼ同等の実力なのだ。直近では竹内優月女流2級が奨励会試験を受け、6級で合格した。なお、現在の女性奨励会員は竹内6級だけである。
女流棋士と男性棋士との棋力差
女流棋士制度は女性に将棋を普及することを目的として発足したこともあり、男性棋士との棋力差はなかなか埋まらなかった。1980年代に女流棋界で二強時代を築いた林葉直子さん(元女流棋士)と中井広恵女流六段は、いずれも奨励会に在籍した経験があるが、級位者止まりで退会している。
女流棋士が初めて男性棋士が指す公式戦に参加したのは1981年の第12期新人王戦。当時の山下カズ子女流名人と蛸島彰子女流王将の参加が認められたが、いずれも敗れた。それからも女流棋士の公式戦参加は続いたが、なかなか白星を上げるには至らなかった。