歴史が動いたのは93年12月9日。第7期竜王戦で中井広恵女流六段が池田修一七段を破った。これが公式戦において女流棋士が男性棋士を破った史上初の例である(なお、女流棋士の公式戦初勝利は、83年の第15期新人王戦で林葉さんが中井女流六段を破った星がある)。女流棋士が公式戦を指す39局目でのことだった。ちなみに対男性棋士の2勝目も翌94年8月に中井女流六段が上げている。
女流棋士の公式戦における節目の記録
風穴があいたとはいえ、以降も女流棋士がなかなか勝てない時代が続いた。かつては男性棋士相手に2割勝てば「勝っている女流棋士」と言われたものである。
これまで、35人の女流棋士が公式戦を指した経験があるが、女流棋士の公式戦における節目の記録を見ていきたい。史上初の公式戦対局と公式戦勝利は上記の通りなので、他の主なものをあげる(男性棋士の肩書はいずれも当時のもの)。
史上初めて現役のタイトルホルダーと公式戦を指した女流棋士:
84年4月27日の第15期新人王戦での林葉直子さん。対高橋道雄王位戦。
史上初めて同一期の棋戦で2勝した女流棋士:
99年の第8期銀河戦での斎田晴子女流五段。沼春雄六段と剱持松二八段を連破。なお次戦で佐伯昌優八段に敗れたが、佐伯―斎田戦は女流棋士が公式戦で師弟戦を行った史上唯一の例である。
史上初めて現役の順位戦A級棋士に勝った女流棋士:
03年11月3日の第53期NHK杯戦での中井広恵女流六段。対青野照市九段戦。
史上初めて永世称号有資格者と公式戦を指した女流棋士:
03年12月15日の第53期NHK杯戦での中井広恵女流六段。対中原誠永世十段戦。
史上初めてタイトル経験者に勝った女流棋士:
07年7月20日の第1回朝日杯将棋オープン戦での石橋幸緒さん(元女流棋士)。対森雞二九段戦。
史上初めて同一期の棋戦で3勝した女流棋士:
18年の第67期王座戦での福間香奈女流五冠と渡部愛女流三段。福間は浦野真彦八段、島本亮五段、長沼洋七段を連破。渡部は木下浩一七段、泉正樹八段、門倉啓太五段を連破。
史上初めて同一期の棋戦で4勝、5勝した女流棋士:
20年の第92期棋聖戦での西山朋佳女流三冠。泉正樹八段、渡辺和史四段、片上大輔七段、北島忠雄七段、森下卓九段を連破。
史上初めて公式戦の1次予選を通過し、2次予選に進出した女流棋士:
上記の第92期棋聖戦での西山朋佳女流三冠。北島七段を破って1次予選通過が決まった。
史上初めて公式戦の予選を突破し本戦入りした女流棋士:
22年の第48期棋王戦での福間香奈女流五冠、浦野真彦八段、澤田真吾七段、池永天志五段、冨田誠也四段、古森悠太五段を破って本戦入り。