感情を揺さぶる20世紀アート
展示はこのあと、20世紀の作品となっていく。かつて美術作品は人物や風景、静物など具体的なモチーフを表現することに終始してきたが、20世紀に入ると具体物に頼らず、ただ色とかたちだけを示す抽象美術がつくられ始めた。
その初期の作例として、ロシアのカジミール・マレーヴィッチ《シュプレマティズム》はある。当初は具体的なものを描いていたマレーヴィッチは、枝葉の要素をストイックに削っていくうち、幾何学的な模様のみを残す表現へと行き着いたのだ。
その後、多くのアーティストがさまざまなアプローチで、抽象的な表現を志すようになっていく。床上に寝かせた画面に絵の具を垂らしたり投げつけたりして画面を構成するジャクソン・ポロック《緑、黒、黄褐色のコンポジション》や、巨大なカンヴァスに薄い絵の具を何度も流し重ねるモーリス・ルイス《ギメル》など、20世紀アーティストの多様な試みの一端を、今展では実地に観ることができる。当然ながら実物の作品と対面すると、伝わってくる情報量がケタ違いで心に響く。
20世紀を代表する芸術潮流のひとつ、シュルレアリスムの作例もたっぷりある。マックス・エルンストの絵画は一見すると不気味に思えるが、じっくり眺め入っていると、描き手の純粋な好奇心や探究心がはっきりと伝わってきて、観ているこちらも愉しい気持ちにさせられる。
続く繊細な作品の数々
歩を進めると、小さい箱の中に身の回りのささやかなモノや雑誌の切り抜きを組み合わせてコラージュをつくる、ジョゼフ・コーネルの作品がずらり置かれた展示室も現れる。繊細この上ない独自の世界観にどっぷり浸ることができる静かな空間だ。
また、必要最小限の幾何学的な色やかたちを用いて、平面から立体までを生み出すフランク・ステラの作品が並ぶ大空間は、そぞろ歩いていると自分の身体が浮遊し始めるかのよう。同じく、微細な色彩の感覚を大画面で味わう作風のマーク・ロスコ作品を集めた「ロスコ・ルーム」では、身を置いているだけで敬虔な気分に浸れる。
名品の数々によってかくも多様な感情を掻き立ててくれる同館が、今展をもって見納めとなるのは何とも残念なこと。ただし、DIC株式会社の発表によると同館は、「ダウンサイズ&リロケーション」する方針であるという。適切な規模と場所にて、美術館運営自体は継続する意思が示されている。
規模は縮小するかもしれないが、何らかのかたちでこの充実のコレクションが公開・展示される可能性は、大いにあるというわけだ。進展を楽しみに待ちたいところである。
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