大事なのは記憶すること。記憶しておいて本番に臨む
――そうやって内省を深めていく深瀬の内面を、浅野さんはセリフに頼らず、その表情だけで存分に伝えます。それが本当に素晴らしかったなって。
浅野 ありがとうございます。現場ではつねに感覚を研ぎ澄ませていたんですよね。監督がいまこう言った、現場でこういうことが起きた、それなら次のシーンでこんなことができるかも……そう思ったらすぐ、楽屋に戻って実際にやっちゃうんです。たぶん本番のために取っておこうとする人が多いと思うんですけど、僕はそういうことをしませんから。
たとえば深瀬さんの絶望が見えたと思ったら、楽屋でも、その場でもいいんですけど、すぐに「ああー」って出し切っちゃうんですね。大事なのは記憶することですから、それを記憶しておいて本番に臨む。みんな怖いから、あとに取っておこうとするんですけど、一度そこまで行ってしまえば、本番でも同じくらいできるはずなんです。さらにいいものが出ればラッキーですし。
――その手法は、浅野さんが独自に確立したものですよね?
浅野 自分で考えてきました。でも間違いないと思ってます。
――きっといろいろな人から、なにを考えて演技をしているのか、尋ねられますよね?
浅野 それが面白いことに、『SHOGUN 将軍』のチームの若い俳優さんたちも、賞を取る前は誰も聞いてこなかったんです。でも気になってたんでしょうね。賞を取ったあとに、大勢聞きにきましたから。「どういうふうにやってたんですか?」って。賞を取ったから、この人は間違ってなかったんだって信じてもらえたんだと思います。
――ようやくお墨付きが出た、と。
浅野 世界のお墨付きがないと、なんか信用できないところがあったんですかね(笑)。
撮影 橋本篤/文藝春秋
『レイブンズ』
監督/脚本:マーク・ギル
製作:VESTAPOL/ARK ENTERTAINMENT/ MINDED FACTORY/ KATSIZE FILMS/THE Y HOUSE FIILMS
製作協力:TOWNHOUSE MEDIA FILMWORKS/TEAMO PRODUCTIONS HQ
撮影:フェルナンド・ルイス 音楽:テオフィル・ムッソーニ ポール・レイ
出演:浅野忠信、瀧内公美、古舘寛治、池松壮亮、高岡早紀
2024年/フランス、日本、ベルギー、スペイン/日本語、英語/116分/カラー/2.35:1/5.1ch
原題:RAVENS/日本語字幕:先崎進
配給:アークエンタテインメント
ⒸVestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, Katsize Films, The Y House Films
■Instagram ravens__movie_jp
■公式サイト www.ravens-movie.com
TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館、ユーロスペースほか全国ロードショー中
