「青春アミーゴ」のリリースに抱いていた葛藤
本作は芸能界を惜しまれつつも引退した堀北真希の出世作であり、戸田恵梨香や若葉竜也も出演。さらには、悩める生徒たちに寄り添う人物として、夏木マリや故・忌野清志郎といった大御所たちまで顔を揃えている。
主演の亀梨と山下智久が歌う主題歌の『青春アミーゴ』は売り上げ162.6万枚を記録し、2005年のオリコンチャート年間1位を獲得。だが、「修二と彰」は当時まだジャニーズJr.だった亀梨と、すでにNEWSとしてデビューしていた山下が一緒にCDをリリースするという “異例”のユニットだった。亀梨は、KAT-TUNのメンバーを差し置いて一足先にデビューすることに、大きな葛藤があったという。
亀梨と山下という王道アイドルと、のちに朝ドラ『梅ちゃん先生』(2012年/NHK)でヒロインを務めるなど、正統派女優として人気を博した堀北。この3人による学園ドラマと聞けば、信子が修二と彰の手によって瞬く間に可愛くなってチヤホヤされる……といった、シンデレラストーリーを思い浮かべる人もいるのではないだろうか。しかし『野ブタ。』は、そんな単純な話ではない。
他者に受け入れてもらうにはどうすればいいか? どのようにして熱狂は生まれるのか? 現在放送中の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合)にも通ずる正真正銘“プロデュース”の過程をシビアに扱う。それと同時に、高校生が抱く“青春の痛み”を丹念に描いたドラマだった。
「俺が思うに、この世の全てはゲームだ」
「ていうかみんな口には出さないけど、そう思わないとやってられないことばかりだ」
第1話は修二によるこんなモノローグで始まる。同級生たちを心の中で「ガキ」と呼び、達観している修二だが、学校という「社会」で生き抜くことの難しさを誰よりも感じている。だからこそ、彼は学園のマドンナ的存在である上原まり子(戸田恵梨香)と付き合い、爽やかに明るく振る舞うことで、“人気者の桐谷修二”というポジションを築く。