予算はたった60万円、番組出演者はたいした芸もない、ナンパで捕まえてた素人女子…そんな関西の深夜番組が“異例の高視聴率”を記録した理由とは? 元テレビプロデューサーの北慎二氏の新刊『テレビプロデューサーひそひそ日記――スポンサーは神さまで、視聴者は☓☓☓です』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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ナンパで「一芸に秀でた素人女性」を探していると…
「スタジオに来てくれるだけでいいから、お願い!」
まだテレビの神通力があった時代で、テレビに出られるというと興味を持ってくれる子も多かった。多少でも興味を示してくれたら、強引に説得してテレビ上方まで連れてくる。すると若い女の子はテレビ局の雰囲気に浮かれてしまう。
さあ、ここからが勝負どころだ。オーディション番組なので、なんらかの自己アピールをしてもらわないといけない。街で突然声をかけられるままにやってきた女の子にテレビで披露できる一芸などない。そこでディレクターが思いつきで提案していく。
「歌とか、ダンスはできひんの?」
「え~、そんなん、なんもできひんわ」
「せっかくここまで来てくれたんやからテレビ出たいやろ? 一発芸とかでもいいんやけど?」
「え~、なんやろ。縄跳びの二重跳びくらいかな」
「それじゃあ、番組にならへんわ。パンツをお尻に食い込ませて、一瞬見せて『Tバック』とか言うんはどうかな?」
「そんなん無理! あたし、ケツ汚いもん」
そう言いながら手を叩いて笑っている。下ネタも絶対NGというわけでもなさそうだ。オーディションの一芸は、歌を歌うとか、ミュージカルの一場面を披露するとか、新体操のリボン演技といったものがメインであったものの、深夜番組のアクセントとしてお色気も盛り込んでいた。女の子の拒否反応が薄いのをいいことにディレクターがさらにえげつない提案をする。