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ムンクがあまりにも有名な「叫び」を描けた理由

アートな土曜日

2018/11/03
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肉親を亡くしたトラウマから、ムンクが決意したこと

 若いうちに姉、母、父、相次いで肉親を亡くしたムンクは、精神的苦痛とこの世の無常を強く感じた。そうして、

「読書する男や編み物する女のいる室内画を、もう描いてはならない。呼吸し、感じ、苦悩し、愛する、生き生きとした人間を描くのだ」

 と書き記し、生と死のあいだの切実な部分のみを絵にせんと決意したのだった。

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エドヴァルド・ムンク《病める子Ⅰ》1896年

 100年以上も昔に描かれた《叫び》は、現在の私たちがいまだ翻弄され続けている存在に対する不安を、いち早くシンプルに、かつ強烈にイメージ化した作品だった。誰もがひと目、実地に拝みたいと願うのもむべなるかな。《叫び》と出逢うためだけに足を運ぶ価値、じゅうぶんにありだ。

 会場には《叫び》のほか、約100点のムンク作品がずらりと並ぶ。ひとりの偉大な画家の、画業の全体像をたどれるというのもうれしいかぎりである。

記事中の作品はすべてオスロ市立ムンク美術館所蔵 All Photographs ©Munchmuseet

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