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アメリカに野球マンガはない? ベースボール大国の気になるコミック事情

文春野球コラム ウィンターリーグ2017

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英訳版が人気の国内スポーツマンガとは

 ちなみに、アメリカでは野球だけでなく、バスケットボール、アイスホッケー、アメリカンフットボールといった、いわゆる「四大スポーツ」のコミックもあまり見かけないそうだ。例えば、『BLOOD BALL』という作品は、アメリカンフットボールをモチーフにしているものの、内容はファンタジー要素を多分に盛り込んだものになっているという。

 代わりに、最近注目されているスポーツマンガが「FENCE」。なんとフェンシングを取り上げたコミックであり、一部のファンから人気を集めているらしい。また、アメリカのプロレス団体「WWE」を描いた作品もある。実在の選手も登場しているとか。剣技であったり格闘技であったり、バトル要素が入ったほうが、アメコミ的にはウケがいいようだ。

フェンシングを題材にした珍しい作品『FENCE』 ©ツクイヨシヒサ
プロレス団体「WWE」を描いた格闘技マンガ ©ツクイヨシヒサ

 一方で気になるのが、英訳版における日本のスポーツマンガ人気である。翻訳された和製作品のなかで、扱いが大きいのは『週刊少年ジャンプ』で連載中の『ハイキュー』だとか。バレーボールを題材にした高校生たちの青春ストーリーだ。同じく『ジャンプ』系のバスケットボールマンガ『黒子のバスケ』も目に付くとのこと。どちらも少年マンガながら、女性人気が高いことで知られており、同様のファンが英語圏にも少なくないことが予想される。

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 では、日本の野球マンガはどうなのかと調べてもらったところ、「あだち充」先生の名前を発見。『H2』や『クロスゲーム』の英訳版が手に入ることがわかった。日本の高校野球事情や、甲子園などに対して、外国人がどういう感想を持つのかはぜひ聞いてみたいところだ。

 かように、全体には厳しい印象のアメリカにおける野球マンガ事情。しかし、状況が変わる可能性は十分にあると大須賀さんは語る。

「もしアメリカで、すでに有名な作家の先生が野球を題材に描いたら、一気に広まることもあると思いますね。あと個人的には、『巨人の星』のアメリカンスタイルみたいなものをつくったら、意外とウケるかもしれないかなと。巨人の設定をニューヨーク・ヤンキースに置き換えてみる、とか。ただし、絵柄的にはアメコミに馴染まない雰囲気なので、その辺りには工夫が必要です」

 ベースボールとコミックを愛するアメリカにも、決してマネできない野球マンガ大国・日本。世界にもっと、野球マンガの魅力を知ってもらいたいものである。

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