麻雀にはまって人生を狂わせた17人に取材した実録ドキュメント『ルポ 麻雀に狂った人たち』(竹書房)。

 ここでは本書より一部を抜粋して、二度の離婚を経てシングルマザーとして娘を育てながら麻雀プロとして働く勝田江梨さん(仮名)の体験を紹介する。悩みの尽きないその生活とは……。(全2回の2回目/最初から読む

勝田江梨さん

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 勝田江梨さん(仮名)は、麻雀のプロテストに合格した20代のとき既にシングルマザー。二度の離婚を経て、今は派遣の仕事をしながら、リーグ戦に参加するなど大忙しだ。麻雀の世界で、若いシングルマザーが生きていくにはどんな苦労があるのだろうか。

幸せだという噂を聞いたのに「また離婚したんですよ」

 勝田江梨さんを初めて取材したのは2019年の年末。

 取材しようと思ったのは、彼女が二度目の結婚をして幸せそうだという噂を聞いたからだ。結婚して幸せな状態で、あえてシングルマザー時代の苦労を振り返ってもらおうと思っていたのだが、取材の当日、現れた彼女の口から出た言葉は、

「私、先日、離婚しました!」

 だった。

「だからまたシングルマザーに戻ってしまいました」

 とあっけらかんとしている。

 当初の予定と違ったが、まずは結婚と離婚のいきさつを聞きながら、これまでの人生を振り返ってもらった。

「1回目の結婚・離婚は、倍満ツモの後のマンガン放銃でしたね。4000・8000ツモって余裕のトップ目なのに、あっさり8000放銃してしまいました。残った8000が、子供です。親権は私にあり、娘とは一緒に暮らしています。親権を私が得るのは大変でしたけど、自分が引き取ってよかったと思います。

 2回目はちょっとしょぼかったなあ。子供のことを考えて、少し焦って結婚したかもしれませんね。

 思春期になると、赤の他人に対して抵抗が出てくるものです。自分も母子家庭で育ったので、その感覚がわかるんです。だからまだ子供のうちに、『この人がお父さん』というちゃんとした人と結婚しようと思ったんですけど、結局はうまくいきませんでした。2回目の結婚・離婚は2000・4000ツモった後の5200放銃ですね」

 このように、江梨さんは、なんでも急に麻雀に例える。

「最初の夫は市川海老蔵みたいなルックスの、すごい男前だったんですよ。学生時代に働いていたキャバクラのお客さんです。在学中に妊娠して、卒業してすぐに結婚して出産して、当時は本当に幸せでした。

 でも、結婚して一緒に暮らし始めると、お金にキタナイってことがわかったんです。そもそも、独身時代に作った借金を私に隠していて、実質いくら借金があるのかは最後までわかりませんでした。私はパチンコ屋でアルバイトをしていましたが、二人の収入を合わせても生活はギリギリで。夫はしょっちゅう競馬に行ってしまうんですけど、生活が変わるほど大きな勝負には出られず、ちまちま小バクチをしてました。

 結局、夫の勤め先で金銭トラブルがあり、それをきっかけにあいそをつかして離婚しました。私の母親もシングルマザーだったので、自分も子供を引き取って絶対に頑張ろうと思いました」