ビジネスの資金源はロシアの大金持ちだった
先日久しぶりにマンハッタンの旧知の不動産投資家と食事を共にした。1980年代後半は、私もゴールドマン・サックスで不動産ファイナンスを扱っていたので、いろいろと想い出話が出た。
例えば、私が当時住友不動産に5億ドルで斡旋した「5番街666番地」のビルをトランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナーは18億ドルで買ったが、持ちこたえられなくなりリファイナンスを繰り返し、最近では中国系投資家を抱き込もうとしたがこの話は壊れたとか、彼が以前トランプのところにパートナーといっしょに商談に行ったら、そのパートナーを切って自分とやれと言い出し、断ったらトランプは机の上に乗って何度もジャンプして怒ったとか……。
そこでクイズを出した。「トランプにとってロシアと中国と日本のうちどれが一番大事か?」。彼の回答は「そりゃ断然ロシアだよ。金持ちにしてもらったんだもの」だった。
ニューヨーカーが持つトランプの一般的なイメージは、「カジノと不動産で成り上がり、大統領に間違って選ばれてしまった人」というものだ。ニューヨークは民主党の強い州で移民の多い街だから反トランプ感情は強い。お膝元ではあるものの、大統領選でのマンハッタンにおける得票率は実に10%。米国全体でトランプ支持率はFBIのコーミー長官をクビにした後、36%に低下。ニューヨーカーだけに聞けば、さらに低かろう。
ロシアの大統領選への介入、またトランプ選挙本部との癒着の調査については、ロバート・モラー元FBI長官が司法省により特別検察官に任命された。その容疑の背景には、彼の富の形成にあたって最も重要な資金源がロシアであったこと、そしてそのロシア資金はマフィアの資金と分別することが極めて難しいという問題がある。
ロシアからの投資マネー
マンハッタンを歩くとたくさんの高級コンドミニアム(略してコンドという)に「トランプ」という金ぴかの看板が付けられている。この看板が付いていても彼が自分の資金で開発したものとはかぎらない。ドイツ銀行を中心とする銀行借り入れ(ロシア資本をマネーロンダリングしてもらったうえで借りたとフィナンシャル・タイムズが報道)、ユダヤ系資本、ロシア系資本など様々な資本が利用されて来た。
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source : 文藝春秋 2017年07月号