ウクライナ領クリミア自治共和国をロシアに編入したロシアの地政学的リベンジは、9.11テロと“アラブの春”によるイスラムの挑戦、「海洋に対する戦略的意思」とサイバー戦争に見られる中国の攻勢に次ぐ「冷戦後」の崩壊を示している。
アンゲラ・メルケル独首相は、連邦議会での答弁でロシアは「ジャングルの法則」に訴えていると批判した。彼女はまた、オバマ米大統領との電話会談で、プーチンは「もはや別世界に住んでいるようだ」と述べたと報道されている。
プーチンは別世界の男になった、つまりロシアの新たなツァーとなったことをメルケルは伝えようとしたのだ。
プーチンにとっては「ウクライナを失ったツァー」としてロシアの歴史に記されるかどうかのレガシー(歴史遺産)危機にほかならなかった。
プーチンは、ソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的破局」と形容したことがある。その屈辱感はどす黒く、屈折している。
なかでも1991年のウクライナ独立は、生木を裂かれたような喪失感をロシア人に感じさせた。随分前になるが90年代初頭のロシア取材の際、親しくなったボリス・フョードロフ蔵相との会話を思い出す。彼はロシア帝政末期の政治家でストルイピン改革で知られるピョートル・ストルイピンをいたく尊敬し、その伝記を書いているところだった。
だが、改革派の彼にして、話がウクライナの独立に及んだ時、ロシアはウクライナだけは失うわけにはいかない、と熱を込めて語った。
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source : 文藝春秋 2014年5月号