ガンダムが描いた戦争の「虚と実」

小泉 悠 東京大学先端科学技術研究センター准教授
高橋 杉雄 防衛研究所防衛政策研究室長
太田 啓之 朝日新聞記者
ニュース 社会 国際 テレビ・ラジオ 映画

本物の戦争は「アニメの戦争」をどう変えたか

 小泉 今回、われわれが共著者として上梓した『ゴジラvs.自衛隊 アニメの「戦争論」』は、「文藝春秋 電子版」でのオンライン番組が本になったものです。「『新世紀エヴァンゲリオン』の世界では、ソ連は崩壊していない」とか、「『風の谷のナウシカ』のバカガラスとナチスドイツで開発されたギガントの運用方法の比較」といった、かなりマニアックな内容ですが(笑)、番組がスタートしたのは、もう2年も前なんですね。

三氏らが共著者の新刊。表紙には1990年代の名作とされる押井守監督の『機動警察パトレイバー2 the Movie』が採用された Ⓒ文藝春秋

 高橋 ウクライナが大規模反転攻勢に着手した頃でした。あの頃から世界の景色は大きく変わりました。

 ――たった数年のうちに戦争観が大きく変わったいま、振り返ると過去のアニメ作品が描いた戦争も、違って見えるのではないでしょうか。

 太田 現実がフィクションを超えてしまった感じはします。かつてアニメで描かれていた戦争には、前提となる国際秩序がありました。その秩序を乱す敵と戦う、というのが大きな主題だった。

 1990年代の名作とされる押井守監督の『機動警察パトレイバー2 the Movie』もそうでした。日本国内でテロが画策されるという物語でしたが、ここでも国際連合中心の世界が機能していることを前提に描かれていた。元自衛官のテロリスト・柘植行人(つげゆきひと)は、自衛官時代にPKOとして派遣された東南アジア某国で反政府ゲリラの攻撃に遭い、その立場の脆弱性から現場で反撃が許されず、たくさんの部下を失ってしまう。そのトラウマがテロの出発点でした。柘植はテロの首謀者で秩序を乱す悪役だけど、感情的には寄り添うことができるキャラクターだった。

 ――PKOや専守防衛といった、政治的背景を描いたという意味では新しかったのではありませんか。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

初回登録は初月300円・1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

18,000円一括払い・1年更新

1,500円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2025年5月号

genre : ニュース 社会 国際 テレビ・ラジオ 映画