朝日新聞が、1914年4月20日から8月11日に同紙に連載した夏目漱石(1916年没)の『こころ』を今年4月20日から再連載している。作家の著作権は、死後50年で消滅する。従って、この連載の原稿料は一切発生しない。連載小説のリサイクル・ビジネスであるが、読者の評判もなかなかいいようだ。この機会に漱石に対する関心が高まるのはとてもいいことと思う。
『こころ』の大学受験対策用メモを筆者が作成したとすれば、こんな内容になるだろう。
時期 明治末期
構成とあらすじ 上「先生と私」、中「両親と私」、下「先生と遺書」の三部構成。
語り手の「私」は、鎌倉へ海水浴に出かける。そこで「先生」を見かける。私の方から先生に接触して交遊が始まる。謎めいた教訓をときどき口にする先生に私は惹き寄せられる。先生の夫婦関係はいまひとつうまくいっていない。先生は、雑司ケ谷にある墓地に月1回、必ず墓参りをする。そこには学生時代の友人が葬られているようだが、先生はその件については何も語らない。
腎臓病が悪化した父を見舞うために故郷に帰る。大学卒業後の就職を心配する両親を安心させるために、私は先生に就職斡旋を求める手紙を書く。これに対して先生から届いたのは分厚い遺書だった。
遺書には、先生の秘密が記されていた。雑司ケ谷の墓地に葬られているのは、先生の親友のK。Kは先生と同じ未亡人の家に下宿し、そこの一人娘を巡って三角関係にあった。Kの想いを知りながら、先生は未亡人に娘との結婚を申し入れ、未亡人は求婚を認める。その数日後にKは自殺する。Kの遺書には、「自分は薄志弱行で到底行く先の望みがないから、自殺する」という抽象的な内容しか書かれていないが、先生はKが自殺した原因は、自分がKを出し抜いて求婚したことにあると確信する。しかし、この認識を誰にも語るまいと先生は封印する。明治天皇の崩御と乃木希典大将の殉死に触発され、先生も自殺を決意する。自殺をする前に、私に宛てた遺書を書く。
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source : 文藝春秋 2014年9月号