戦争の記憶が風化する高度成長期、「記録」にこめられた鎮魂『戦艦武蔵』吉村昭

ベストセラーで読む日本の近現代史 第11回

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官
ニュース 社会 読書 歴史

 戦艦大和と同型の二号艦・戦艦武蔵の生誕から死までの物語を、吉村昭氏が丹念な資料の読み込みと、取材によって描いている。感情移入が過剰にならないようにする、あえて対象から距離を置いた記述をしている。それ故に本書を読み終えた後に、強い感銘を読者に与える。

 本書は、通常の戦記ノンフィクションと異なり、7割が、武蔵の建造に関する記述に充てられている。戦闘よりも、軍事的観点からは合理的でない巨大戦艦の建造になぜこれだけのエネルギーを当時の日本人が投入したかという悲喜劇の解明を吉村氏が重視したからである。

 

 冒頭がミステリアスな書き出しだ。

〈昭和十二年七月七日、蘆溝橋に端を発した中国大陸の戦火は、一カ月後には北平を包みこみ、次第に果しないひろがりをみせはじめていた。

 その頃、九州の漁業界に異変が起っていた。

 初め、人々は、その異変に気づかなかった。が、それは、すでに半年近くも前からはじまっていたことで、ひそかに、しかしかなりの速さで九州一円の漁業界にひろがっていた。

 初めに棕櫚(しゅろ)の繊維が姿を消していることに気づいたのは、有明海沿岸の海苔養殖業者たちであった。〉

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source : 文藝春秋 2014年8月号

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