長期にわたり世論の支持を集め、安定した政権を運営することは難しい――。長年、政界を取材し、昨今の政治状況を見て改めて思うことだ。10月に行われた衆院選では自民・公明両党が15年ぶりに過半数を割り込み、大敗を喫した。派閥の裏金事件など「政治とカネ」を巡る問題が大きく影響したと言える。
ただ、石破茂政権の発足当初から永田町では「1年持たない」「早々に引きずり下ろされる」などの声があがっていた。それも無理からぬことで、「党内野党」として歯に衣着せぬ言動を繰り返してきた石破首相には敵こそ多いが、手足となる側近がいなかった。党執行部や閣僚を見渡しても、身を挺してまで守る“決死隊”はいなかった印象だ。

党内基盤が弱いと、首相は何も決められない。その証拠に石破首相は就任当初に衆議院解散を強行し、持論である日米地位協定改定も封印するなど「石破カラー」は見る影もなく、変節ぶりに批判が殺到した。党内論理を優先せざるを得ない状況に苦慮していたことがよく分かる。
石破首相はいくつもの点で判断を誤り、安定政権を築く条件を満たしていなかったように思う。それは岸田文雄前首相にも、その前の菅義偉首相にも言える。
私は20年以上にわたり、安倍晋三元首相を取材してきた。安倍首相は歴代最長の7年8か月という首相在職日数を誇る。そこで、安倍首相がなぜ安定政権を築くことができたのか、そして、濃淡はあるにせよ、なぜ石破首相をはじめ安倍政権以降は世論の支持を集めることができなかったのか、私なりに考えてみたい。
まず政権運営の要諦は人事だ。しかし、石破首相は9月の自民党総裁選で対決した高市早苗氏の処遇を大きく誤ったと言える。総務会長を打診して固辞されたが、せめて財務相か幹事長などの重要ポストを用意すべきだった。ライバルを厚遇し、反目させないことは人事の鉄則だ。
野党だった2012年の総裁選は1回目の投票で石破氏が1位だったが、決選投票で安倍首相が逆転勝利を収めている。その際、安倍首相はあえて石破氏を幹事長に迎え、二枚看板で政権運営に当たった。14年8月に石破氏が安保法制担当大臣を固辞した時も、安倍首相は「『では、何がやりたいのか?』と礼を尽くして尋ねるつもりだ」と決意を語り、処遇に心を砕いていた。結果的に石破氏は地方創生担当大臣に就任している。
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