内に秘めた情熱で目指す新三役昇進

大相撲新風録 第34回

エンタメ スポーツ
豪ノ山 ©時事通信社

豪ノ山(ごうのやま、大阪府寝屋川市出身、武隈部屋、25歳)

 元大関豪栄道の武隈親方にとって、一番弟子にあたるのが豪ノ山だ。178センチ156キロの均整の取れた体格で、相撲を始めた6歳の頃から押し相撲一本やり。今年の五月夏場所では、当時19歳だった「令和の怪物」――伯桜鵬と十両優勝争いを繰り広げ、14勝1敗同士で決定戦にもつれ込んだ。豪ノ山の気迫勝ちで、優勝をもぎ取ったのは記憶に新しい。翌七月名古屋場所での新入幕は、伯桜鵬と同時昇進と相成った。伯桜鵬の負けん気に火を付け、新入幕同士の対決では惜敗するも、10勝5敗の好成績で敢闘賞を受賞する活躍ぶりだった。

 埼玉栄高校から中央大学を経て、2021年3月、同郷である大阪府寝屋川市出身の武隈親方を慕って入門した豪ノ山。三段目百枚目格付け出しとして初土俵を踏み、翌年名古屋場所で新十両に昇進。振り返れば十両優勝を引っ提げて新入幕を決めた晴れの会見では、「もっと早く上がりたかった」と、静かに歯がゆさを噛みしめていたものだ。

 先の九月秋場所では、自己最高位の東前頭五枚目で9勝6敗の好成績を上げ、じわりじわりとその存在感を増してきている。その後の秋巡業中、支度部屋でひとり体を横たえ、休息している豪ノ山がいた。黒目がちの大きな瞳が、どこか可愛らしくもある25歳の青年が、落ち着いた口調で語る。

「9勝したから次はイケる、とかはないです。まだまだですね。先場所、初めての大関戦では貴景勝関に力負けしてしまったし、これからも必死にやっていくだけです。常に2桁勝っていかないと番付もなかなか上がりません。今は勉強の場所だから、などとは考えたことがないですし、これからの課題は自分の押し相撲を徹底すること。そうでないと上位には勝てないとわかりましたから」

 師匠には毎日、同じ言葉を繰り返されているという。「まわしを取るな!」「引くな、前に出ろ!」との声が稽古場に響き渡る。来たる十一月九州場所の成績いかんで、新三役昇進も目の前だ。

「もっと押しを磨いていきたい。しっかり勝ち越して番付を上げたいです」

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source : 文藝春秋 2023年12月号

genre : エンタメ スポーツ