北青鵬(ほくせいほう、北海道札幌市東区出身、宮城野部屋、21歳)
身長2メートル4センチの北青鵬は、モンゴル生まれ。母親の留学に伴なって幼少時から北海道の大地でのびのびと育った。「20歳超えてからもまだ身長が伸びているんですよね」と笑顔を見せる。元横綱白鵬に目を掛けられて相撲を始め、2020年3月、鳥取城北高校卒業を機に白鵬の弟子として角界入り。序ノ口、序二段、三段目、幕下と各段を制覇し、翌年7月に新十両昇進。今年3月に新入幕し、先の五月夏場所では元大関の朝乃山をひっくり返して大歓声を浴びた。
規格外のスケールだ。長身から伸びる腕で、相手のまわしを肩越しにむんずと掴む。長い脚の上に位置する北青鵬のまわしは掴みにくく、対戦相手の誰もが手こずるようだ。土俵を降りればいつもニコニコと笑顔を絶やさず、ファンサービスもばっちりの好青年でもある。
白鵬率いる宮城野部屋では、小兵の人気力士炎鵬のほか“令和の怪物”と呼ばれ十両の土俵を連日沸かせた落合、幕下筆頭で勝ち越し、新十両昇進を決めた川副らが切磋琢磨し、次代の相撲界を担う逸材が集っているのだ。現在の宮城野部屋は、かつてジェシーの愛称で親しまれたハワイ出身の高見山――元東関親方が構えた家屋を間借りしている。北青鵬が住む個室は、同じく2メートルを超える長身横綱・曙が使っていた部屋なのだそうだ。「目標はもちろん横綱です」と臆面もなく素直に口にする北青鵬。モンゴルの大横綱の指導のもと稽古に励み、外国人初の横綱だった曙が暮らした縁起の良い空間で、伸びやかな体を休めている。
ある日のこと。大学相撲に明け暮れる息子を持つ、鹿児島の離島に住むママがこんな秘話を打ち明けてくれた。
「北青鵬はね、中学、高校時代からうちの息子と大会で顔を合わせていたんです。北青鵬は北海道、うちは鹿児島なんですけど、気が合ったのかしら。息子が高校時代に相撲を辞めようと悩んでいた時に、『辞めるなよ』と彼がずっと励まし続けてくれていたんですね。北青鵬と違って息子は全然強くないんだけれど(笑)、大学の4年間、相撲をまっとう出来て、お陰で就職も決まりました」
夏場所後に予定されている北青鵬の昇進パーティに、同級生ママは息子とふたり、はるばる離島から駆けつけたそうだ。
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source : 文藝春秋 2023年7月号