元大横綱も唸る「令和の怪物」

大相撲新風録 第30回

エンタメ スポーツ
©時事通信社

伯桜鵬(はくおうほう、鳥取県倉吉市出身、宮城野部屋、19歳)

「令和の怪物」と呼ばれるのは、19歳の幕内力士、落合――改め伯桜鵬だ。2年連続の“高校横綱”と“アマ横綱”のタイトルを引っ提げて、元横綱白鵬が率いる宮城野部屋の門を叩いた。2023年1月の初場所、幕下付け出し15枚目格で初土俵を踏むと、7戦全勝で幕下優勝。史上最速記録の所要1場所で十両に昇進し“坊主頭の関取”として話題に。

 先の五月夏場所では、ケガした肩をテーピングで覆い、土俵に立ち続けた。十両優勝決定戦で豪ノ山に惜敗し優勝を逃すも、いたって“冷静に”悔しがる。

「勝っても負けてもケガを言い訳にはしたくない。3日に一度、痛み止めの注射を打っていましたけれど、肩が悪い状態でも14勝という成績だったことは、逆に自信にも繋がりました」

 181センチ162キロの、けして大きくはない体で、組んでよし離れてよし。大横綱だった師匠が、「あの若さで、すでに相撲を知り尽くしているかのようだ」と唸るほどの相撲っぷりだ。若さ溢れるスピード感と反応の速さ、勝負強さも兼ね備えた、恐るべき大器なのだ。遠藤に並ぶ史上最速幕内昇進記録に周囲は沸き立つのだが、幕内最年少関取は、いたって謙虚でもある。

「自分は相撲という競技が大好きで、憧れた夢舞台に立てました。いろいろと取り上げてもらって嬉しいです。入門以来まだ3場所ですが、出来すぎだとも思っています。この結果に満足して調子に乗った時に足元をすくわれると、常にその気持ちを忘れずにやってきました」

 そう表情を引き締める。新入幕力士として七月の名古屋場所を迎えたが、まずは幕内の土俵に慣れ、豪ノ山にリベンジを果たすことが目標のひとつだ。

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source : 文藝春秋 2023年8月号

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