遠藤周作が好んだ滋賀・海津 「湖里庵」の鮒寿し

第15回

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鮒寿しは「熟(な)れ寿司(ずし)」の一種であり、およそ1500年前、大陸から日本に伝わった(コース料理、一人15,000円)

遠藤周作 Ⓒ文藝春秋

「灯りのない闇夜の湖に笛の音がどう響くのかを知りたいと言って、周作先生はここに笛の奏者を呼んで泊まっていくこともありました」

 そう語るのは琵琶湖に面した「湖里庵」主人である左嵜(さざき)謙祐さん。同地の固有種であるニゴロブナを炊いたご飯とともにおよそ2年間、乳酸発酵させることで完成する鮒寿し。その味は240年を超える伝統を持つ。独特の風味に魅了された遠藤周作は生前、年に数回は必ず同地を訪れたという。冒頭の“闇笛の会”は戦国時代を描いた『男の一生』にその描写が登場するなど、遠藤はときに創作のインスピレーションをもここで得た。

 先代から料亭旅館の命名を頼まれた遠藤は、自らの雅号である「狐狸庵」を与えるほどにその味や土地を愛した。

 

宿泊もできるオーベルジュ。レストランの眼下には鏡のような琵琶湖が拡がる。遠藤周作は特に冬の琵琶湖を好んだ。

湖里庵 
滋賀県高島市マキノ町海津2307

☎0740-28-1010

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source : 文藝春秋 2024年8月号

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