「失われた30年」を脱するには株主との建設的な対話が必要だ
楠木 「失われた30年」と言われるたびに思うのですが、普通、それだけ長期に亘り経済が低迷したら、社会は荒廃します。30年も失い続けられるのは日本の特殊能力と言ってもよい。
石井 確かにそういう見方も出来ますね(笑)。
楠木 社会が荒廃しないのは、なんだかんだ言って日本人が真面目に働く国民性だからでしょう。問題は、その勤勉さの上に、経営者たちが胡坐(あぐら)をかいてしまったことにあると思います。「企業」という言葉には、「企(たくら)み」という文字が入っています。会社はもともと、何らかの企みを実現するために作られたはずです。ただ、この30年間、多くの会社で本来の目的である、企みが失われていったのではないでしょうか。
石井 私も会社から能動的な主体性が失われてしまったと考えています。「こういう事業をしたら面白いんじゃないか」「そのためにこの会社はある」。そうした原点が多くの日本の会社から失われかけている。
株主に「成長しなさい」と言われて、会社はすぐ成長できるものではありません。成長の原点は「上手くいくかわからないけれど、やってみよう」というエネルギーです。そのエネルギーの源を、会社と株主のディスコミュニケーションが、せき止めてしまっているのではないか。それゆえにこそ私は、会社と株主の建設的な対話(エンゲージメント)が重要だと思うのです。
楠木 日本の会社が継続的に成長し、「失われた30年」を脱却するためには、会社の背中を押して新しい冒険に出ることを促すような株主のエンゲージメントがいまこそ求められている、ということですね。
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