“昭和100年”を辿る時計

ライフ ファッション

2025年は昭和100年目にあたる。敗戦や経済的繁栄だけが昭和のすべてではない。当時の独自の雰囲気や流行は、不朽の名作となる時計も誕生させている。形やデザインを進化させ、いまも引き継がれるモデルとともに、時代を振り返った。


※キャプションのデータは、ムーブメント方式、ケースの素材(SS=ステンレススチール、PT=プラチナ、YG=イエローゴールド、PG=ピンクゴールド、RG=ローズゴールド)、ケース径(mm)、型式番号、2024年11月末の税込価格となります

1920-30s

 大正モダンの薫りが残る昭和初期、洒落者の紳士淑女は「モボ・モガ」と呼ばれるファッションに身を包み、欧米のジャズ・エイジやダンスホールといった狂騒を謳歌するスタイルが流行した。巨匠ルノワールが描き、フレッド・アステアが好んだカンカン帽は、モダンな洋装の嗜みとしてステッキとともに愛された。新しい装いを人々が求め始めたのだ。

Patek Philippe(パテック フィリップ)|ゴンドーロ(左)/ワールドタイム(右)

左:「ゴンドーロ」はもともとブラジルの有力なパテック フィリップの販売店のために作られていた懐中時計のコレクション。昭和の足音が近づく1920年代初頭、これらを特別な腕時計として、アールデコに触発された華やかなケース意匠や装飾が施された。幾何学的なケース形状に108個の優美なダイヤモンド・セッティングが際立つデザインだ。手巻き、RG、縦30×横33.8mm、7041R ¥5,930,000 右:昭和初期の1930年代には飛行船が大西洋横断航路に現れ、短時間で複数の時間帯をまたぐ生活が現実となり、複雑なワールドタイム機能が生み出された。いまや世界24タイムゾーンの時刻を表示できる。自動巻き、PT、39.5mm、5930P ¥16,980,000/ともにパテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター☎03-3255-8109

1950s

 テレビの普及前、映像や音声より活字こそがメディアだった頃、文壇に彗星のごとく現れた石原慎太郎が、昭和30(1955)年に『太陽の季節』を発表。アロハシャツに身を包み、刹那の享楽に生きる若者像は「太陽族」と呼ばれた。娯楽が社会現象やスターを生み翌年、“もはや戦後ではない”と経済白書は記した。

Breguet(ブレゲ)|タイプXX 2067

創業者アブラアン-ルイ・ブレゲはフランスの王政復古期、海軍時計師の称号を得ていた。1950年代に再び、フランス空軍と海軍航空部隊が操縦士用の時計の製作をブレゲに依頼。飛行時に手元で時間を計測中、リセットと再スタートが素早く行えるフライバック機能付きクロノグラフとして「タイプXX」は開発され、制式採用された。これがやがて民生用モデルとしてラインナップに加えられ、現在に至る。ブレゲには珍しい野趣と洗練を併せもつ1本。自動巻き、SS、42mm、2067ST/92/3WU ¥2,882,000/ブレゲ ブティック銀座☎03-6254-7211

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source : 文藝春秋 2025年1月号

genre : ライフ ファッション