関係性が希薄で、十数年も共に暮らした「家族」なのに人見知りをしてほとんど話せない。家族で食卓を囲む習慣がなく、机もない部屋で、食事を床に置いて一人で食べる子どもがいる。すべて私の体験です。外では「両親がそろっていて、平和な家庭で育った“普通の子ども”」に見える人が、実はこんな環境で暮らしていると想像したことがあるでしょうか。
母は布団から出てこずに「死にたい」と泣いている
父は私の誕生日も知らない。祝ってもらったこともない。休日、父は朝から酒を飲んで寝るだけで、母は布団から出てこずに「死にたい」と泣いている。兄はイライラすると私や母を殴り、蹴りつけ、金をせびり、金が底をつくと「体を売って稼いでこい」と罵声を浴びせる。父はそんな私たちを気にかけることもなく、唯一怒鳴り声をあげるのは、見ているテレビの音が兄の大声のせいで聞こえないときだけ。おまけに父も兄も仕事を頻繁に辞めてしまうにも関わらず浪費をし、一家の貯金はゼロ(以下無限ループ)。
そんな毎日が、私が家を出るまで15年ほど続きました。私は小学生の頃にはすでにストレスで自分の髪の毛をむしる癖があり、誰も見ていない台所でひっそりと、包丁を自分の腹にグイグイ突き立てることで「生きている」と実感するような子どもでした。兄の暴力がさらに激化した高校生の頃には胃潰瘍になり、吐血したこともあります。
「コツコツ努力すれば確実に収入を増やせる」という意見
そんな家庭環境だった私は健全に育ったとは言えず、「この苦しみから逃がれたい」ということ以外何も考えられない状態のまま大人になったのです。
先日「情報弱者の貧困層をバカにする人、搾取する人」を書いたあと、予想以上の反響に驚いたのと同時にたくさんのご意見をいただき、ある問題の根深さに気がつきました。
「貧困問題って所詮は怠慢でしょう。コツコツ努力すれば確実に収入を増やせるんだから……」
これを見てまず口から出たのは、「あぁそうか、なるほどなあ」という言葉でした。確かに、世の中にはズボラで、なまけもので、努力が嫌いなゆえにお金がない人ももちろんいる。でもね、実はそうじゃない人もたくさんいるんです。