日本に観光でやってくる中国や韓国の人たちは京都などで古い建築や文物を目にし、「ここに私たちの古い文化が残っている」と感嘆する。自分たちの国では幾多の戦乱と混乱で廃れ、資料に記録としてだけある伝統文化が、日本では現存しているからだ。皇室文化にはそれがまぎれもなく多い。
法政大学教授(比較文化)で中国出身の王敏さんは、前回の即位の礼もテレビで見ている。「宮中祭祀に似たものが中国の古代にもありました。日本では現代にそれらが行われていることに中国人は驚きます。……中国でいえば、紀元前の始皇帝の時代の風がいまも吹いているようなものです」「即位礼のようなイベントは歴史、文化、伝統を総合的に学習する非常にいい機会です。皇室文化はアジアが共有した伝統文化の核心部分だと思います」と、王さんは語っている(10月10日付日経新聞朝刊)。
「饗宴の儀」は回数、招待者とも大幅に削減
前回は中庭に仮ステージを設置して参列者の席にしたが、儀式の簡素化の一環で今回は設けない。その代わり参列者は中庭を取り囲む廊下と「豊明殿」「春秋の間」などの広間に着席し、多数設置される大小のモニターを通しても儀式の様子が見られるようになる。
即位を祝う「饗宴の儀」は、前回は4日連続で持たれ、このうち3日間は昼夜で、計7回すべてが着席、招待者も3400人に上った。今回は簡素化と共に両陛下の負担軽減のため、饗宴の回数、招待者とも、大幅に削減される。
饗宴は22日から31日までとびとびに計4回開かれるが、着席は初日22日の晩餐会と、25日の午餐会の2回。29日と31日は午後3時からの立食となる。4回合わせての招待者は2600人と、前回よりも800人少ない。また饗宴時間も初日だけは3時間半だが、残る3つは40分~50分に抑えられる。
初日の晩餐会がハイライト
ハイライトは初日22日の晩餐会である。即位の礼に参列した外国の王族、大統領、首脳へのお礼ともてなしが目的で、衆参両院議長、安倍晋三首相夫妻なども合わせて410人の規模となる。前回、初日の晩餐会の出席者は350人だったから、これを大幅に上回る。
儀式は午後7時20分に始まる。両陛下が国内外の出席者とあいさつされ、舞楽を鑑賞。両陛下が登壇された高御座と御帳台も出席者に供覧される。その後、晩餐会に移る。
格天井から32個のシャンデリアが輝き、雅楽の演奏が流れる豪華絢爛な「豊明殿」の晩餐会には、前回は皇太子として出席したスペインのフェリペ6世国王、オランダのウィレム・アレクサンダー国王、モナコのアルベール2世公などの元首のほか、前回に続き2度目の参列となる英国のチャールズ皇太子、フィリピンのドゥテルテ大統領、米国のチャオ運輸長官、中国の王岐山・国家副主席ら174カ国・機関の祝賀使節が顔を揃える予定だ。これも前回の158カ国・2機関を上回る。