2020年。いよいよ待ちに待った東京オリンピック・パラリンピックの開催年だ。思えば2013年、前年の衆議院総選挙によってあの「悪夢の民主党政権」から自民党の安倍晋三政権に替わり、何か新しい希望がないのか国民が模索を始めていた時、2020年の開催地が東京に決まった。このことは2011年の東日本大震災で俯きがちだった日本人の心に大きな希望を与えることになった。
不動産業界はアベノミクスで大いに潤った
第二次安倍政権は、アベノミクスと称する3本の矢を柱にした経済政策を発表。3本の矢とは「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」そして「民間投資を喚起する成長戦略」と言われた。
このうち「機動的な財政政策」については、年度で100兆円を超える予算を組み、税収の不足分を国債で補い続ける“アクロバット的な施策”を繰り出しても、思うような景気上昇を実感できずにいる。また「民間投資を喚起する成長戦略」に至っては、政権交代後すでに7年がたつというのに、お腹いっぱいのスローガンはあっても、その戦略戦術はいっこうに見えてこない。
だが不動産業界にとっては「大胆な金融政策」という1本の矢だけで、十分に「干天の慈雨」だった。なぜならば、「黒田バズーカ」という想定外の低金利政策で市中にマネーがどんどん供給され、設備投資が一向に上向かない国内で、銀行を中心としたマネーは不動産に集中。史上空前の低金利は不動産会社の資金調達力を高め、都市部への投資マネーの集中は都心の地価上昇を喚起した。
さらに、地価が上昇すれば土地の担保余力も上昇。新たな投資を喚起し続ける。かてて加えてオリンピック開催に伴う都心部の老朽化ビルの一斉建替えが背中を押して、業界各社は史上最高益を連発した。
この5年で約3割も上昇した新築マンション価格
新築マンション価格はこの5年ほどの間に約3割も上昇。実はその主な原因は建設費の上昇によるものだ。建設費はオリンピック需要で上がっていると説明されることが多いのだが、実は建設業従事者の数は近年大きく減少している。
建設現場での人手不足は深刻な状況にあり、コンクリート型枠工や鉄筋工といった職人の賃金はうなぎ上り、さらに好調なアジア経済を背景に鉄鋼需要が急増。建築資材の値上がりも価格上昇を後押ししているのだ。