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東日本大震災で問題になった「認定率の差」

 審査の結果、災害との関連性があるとされれば、弔慰金が支払われ、災害関連死と認定される。

 ただしもしも遺族が申請しなければ、たとえ震災の影響を色濃く受けた死でも、災害関連死と認められない。加えて、身寄りのない被災者が亡くなった場合も災害関連死にカウントされない。

東日本大震災の被災地 ©文藝春秋

 東日本大震災では、市町村による認定率の大きな差が問題となった。認定の基準がないために、自治体Aでは認められた死が、隣の自治体Bでは「関連性なし」と判断される場合もあった。そもそも、自治体の職員が災害関連死について詳しく知らなかったせいか、窓口で申請を断るケースもあったと聞く。いくつもの「将来への教訓」が失われた可能性がある。

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 2016年の熊本地震では、災害関連死が直接死の4倍近くだった事実を忘れてはならない。過去の災害関連死の「教訓」をもとに適切な支援が行われていれば、たくさんの命を救うことができたはずだ。極論すれば、災害支援の目的は、災害関連死をなくすことなのではないかと思うのだ。

熊本地震で被災した熊本城 ©文藝春秋

「南海トラフ地震」から74年、「首都直下地震」から97年

「首都直下地震」や「南海トラフ地震」……。近い将来、巨大地震の発生が危惧されている。

 直近の「首都直下地震」が、史上最大規模の被害をもたらした1923年の関東大震災である。約190万人が被災し、10万人以上が死亡、または行方不明となった。

 また「南海トラフ地震」は、90年から150年の間隔でくり返されてきた。最近の、南海トラフから発生した地震である1946年の昭和南海地震では1330人が犠牲になった。もちろん関東大震災や昭和南海地震の犠牲者に、災害関連死は含まれていない。

 2020年は、最後の「南海トラフ地震」から数えて74年目、「首都直下地震」から97年目になる。

 歴史を紐解けば、同じエリアで、同じような地震が、くり返し起きている。自然災害の発生は止められない。しかし過去に学ぶことにより、被害を最小限に抑え込むことは可能なのだ。

地図で見る 日本の地震

山川 徹

偕成社

2019年12月24日 発売