新潟県中越地震では7割が災害関連死
次に災害関連死が注目されたのは、2004年の新潟県中越地震である。68人の死者のうち、7割を越す52人が災害関連死に認められた。
新潟県中越地震の特徴は、余震の多さだ。しかも震度5弱以上の余震に18回もおそわれた。家屋の倒壊を恐れてクルマのなかで夜を過ごし、エコノミークラス症候群で命を落とした避難者もいた。エコノミークラス症候群とは、長時間同じ体勢でいた結果、血液の流れが悪くなり、血の塊がつくられ、肺の静脈を詰まらせる症状である。
さらに東日本大震災では、行方不明者をのぞいた15897人の死者のうち3739人が、熊本地震では270人中、215人が、災害関連死だった。
「関連死は、震災で亡くなった人の最期の声です」
高校時代、阪神・淡路大震災で被災した在間文康さんは、現在、弁護士として災害関連死遺族の支援を続けている。彼は災害関連死の意味を次のように説明する。
「関連死は、震災で亡くなった人の最期の声です。関連死の事例は、震災後に何が起きるのか、そしてどんな支援が必要になるのか、私たちに教えてくれます。震災後、被災した人たちがどのような環境におかれるのか。その記録が、将来、おこるであろう災害に備える教訓といえるのです」
震災が被災者の身体と心に何をもたらしたのか。ひとつひとつの災害関連死のケースを明らかにすることが、自然災害の巣と呼ばれる日本列島で生きる我々にとって、かけがえのない教訓になるというのである。
だが、埋もれる災害関連死も少なくない。
原因の1つが、申請の仕組みである。
災害関連死の認定を受けるには、まず遺族が市町村の窓口に出向き「災害弔慰金支給申請」の手続きをしなければならない。「災害弔慰金」とは、災害遺族の心痛や悲しみに対する市町村からの見舞金である。生計を担っていた人の場合は500万円、それ以外は250万円が支給される。
その後、その死が災害と関連性があるかどうかを検証する審査委員会が開かれる。メンバーは、行政の担当者、医師、弁護士ら5、6人で構成される。