男児4人が保護された「泉台マンション」での生活
その後、男児たちのうち、松永と緒方の子供だと推認される9歳と5歳の男児の身元確認問題と、就学問題についてのやり取りがなされ、会見は終了した。
会見の場では少女・広田清美さんについての質問が多かったが、時間の経過とともに、男児4人が保護された、『泉台マンション』での生活の様子についての情報が入ってきた。同室内に入った関係者は語る。
「6畳くらいのフローリングの部屋が2つにバス、トイレ、ロフトという造りです。ロフトは物置として使用されていたようで、クリスマスツリーが置いてありました。壁にはなにかの付録のような身長計のようなものも。キッチンには栄養補助剤の容器と、カップ麺、食パン、カレールーなどがあり、冷蔵庫はなぜか2台置かれていました。全体的に汚れは少なく、整理整頓されている印象です」
やがて、ここでの男児たちの面倒はすべて、清美さんが見るように言いつけられていたことも判明した。
子供たちのルール表「なおらないときは ひもでしばる」
私はこの時期に、同室内に貼られていた〈ルール表〉を入手している。その表内では9歳の子が「特」、6歳の子が「大」と「中」、5歳の子が「小」と区分けされ、それぞれの役割と生活ルールが書かれていた。なお、以下に紹介する文中の「特」や「大」の表記はすべて○で囲まれている。
〈といれに行くじゅんばん(1)「特」(2)「大」(3)「中」(4)「小」
おしっこもらしたひとは いちばんさいご
といれにいくときさわいだひとは といれはつかえない(ぺっとぼとるでする)
かおをあらい、はをみがく(みずはだしすぎない)
たいじゅうをはかる じゅんばんどおり
さわいだひとは あさごはんぬき
くすりをよういする 「特」「中」
てーぶるをよういする 「大」「小」
しずかにまつ
はかってわける ごはん、ぎゅうにゅう、そのほか「特」
あいさつをする「特」ごうれいをかける
ひるごはんまでにさわいだひとは ひるごはんぬき
ばんごはんもおなじ
もし ちゅういしても なおらないときは ひもでしばる
おふろにはいる まってる人はさわがずに しずかにまっておく はいるまえにさわいだひとはふろぬき はいったあとにさわいだひとはせいざ(1時間)
ひるはでんきはつけない ゆうがた7じからつける。
さわがず けんかせず
おたがいに るーるを
まもり なかよくしよう。
らんぼうなことばはつかわない〉
この部屋が借りられた2001年8月7日から、子供たちが保護された02年3月7日まで、こうしたルールの下での、子供だけの共同生活が続いていたのである。
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この凶悪事件をめぐる連載(一部公開終了した記事を含む)は、発覚の2日後から20年にわたって取材を続けてきたノンフィクションライターの小野一光氏による『完全ドキュメント 北九州監禁連続殺人事件』(文藝春秋)に収められています。