刑法改正見直しの年に、議論されること
2020年は、2017年7月にあった刑法改正の「3年後見直し」の年に当たる。改正時に、現行法に反映されなかった性犯罪の被害者団体・支援者団体の意見を刑法に反映するかどうか、議論するときが来たのだ。
性犯罪の被害者団体・支援者団体が訴えている問題はいくつもある。前述の、
・監護者強制性交等罪の年齢が低すぎる問題
・強制性交等罪の暴行脅迫要件が厳しすぎる問題
・準強制性交等罪の抗拒不能要件が厳しすぎる問題
のほか、
・監護者強制性交等罪の適用範囲が狭すぎる問題
→教師やスポーツのコーチなど、被害者に対して強い影響力を持つ立場の人たちが「監護者」として認められない
・性交同意年齢が低すぎる問題
→被害者が「性交同意年齢」に達していなければ、暴行脅迫や抗拒不能に関わらず性交が有罪とされるが、現行法では性交同意年齢は13歳である
なども指摘されている。
そもそも、法律を見直す必要はあるのか?
そもそも、見直しは本当に必要なのか、今回の岡崎準強制性交等事件の控訴審のように、裁判官が正しい「経験則」を用いれば、加害者に対して処罰が必要な事件においてはきちんと有罪判決が出るのではないか、と考える向きもあるかもしれない。
しかし、刑法は、裁判所が判決をするためだけに必要なのでない。裁判官がどのような判断をするかを予測できなければ、検察は起訴に消極的になるし、検察が起訴に消極的であれば警察は被害届を受けることをためらう。
日本では、性犯罪を訴えても被害届さえ受け取ってもらえず、被害者が泣き寝入りするケースが非常に多い。岡崎準強制性交等事件の事案ですら、無罪と判断する裁判官がいるのだから、検察官が起訴をためらい、警察官が立件に二の足を踏むのも、もっともだ。何が犯罪で、何が犯罪ではないかを明確にするためにも、現行法を見直すべきというのが、私の意見だ。