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日本企業も多く進出 中国・広州で「PCR検査陽性」のアフリカ系住民たちが逃げ出した

混乱の背景に人種差別か

2020/04/20

 トヨタ自動車や日産自動車、ホンダの主力生産拠点があり、多くの日本企業が進出している中国南部の商業都市、広東省広州市で、日系企業から新型コロナウイルス感染症の第二波での流行を危険視する声が出始めている。筆者は電話とメールで現地関係者に現状を取材した。

広州市内に出回ったアフリカ系住民についての“通知”

 先週4月11日の土曜日、広州市内にある中国企業からの取引先や従業員らへの連絡と見られる、こんな通知(写真参照)が出回った。日本語に訳すとこう書かれている。

中国企業から取引先や従業員へ送られたと見られる通知

〈最新の感染症防止対策関連報告によれば、昨日、白雲区三元里や越秀区鉱泉街においてアフリカ系住民を対象とするPCR検査が実施された結果、陽性と判定された人は1000人余りだったことが分かりました。隔離作業を実施した過程で、数多くのアフリカ系住民が逃げてしまったことを受けて、皆さんにおかれましては、まず防護措置の徹底、アフリカ系住民を見つけたら地元の窓口に報告するように、ご家族にも伝えてご協力いただけるようにお願いいたします。

 4月12日は休日ですが、泊っている皆さんにおかれましては、工場への出入りの際には必ず自ら消毒し、検温や登録などもしていただきますようご協力をお願いします。取り急ぎご連絡まで〉

 この通知に出てくる三元里地区は、広州白雲国際空港から広州市内に向かう途中にあり、アヘン戦争の際に、英国軍に対して中国の民間人が武装蜂起して戦った場所としても知られる。三元里などでは、アフリカ出身の不法滞在者が中古の携帯電話や古着などを買い取ってアフリカに輸出する商売をしており、ナイジェリア出身者が多いという。

アフリカ出身者が集まって暮らし「リトル・アフリカ」と呼ばれる広州市の一地区 ©︎時事通信社

情報管理できなかった不法滞在者

 広州市内に拠点を構える日系企業で長く中国に駐在している役員はこう説明する。

「アフリカとの関係を重視する中国政府は、不法滞在に目をつぶって強制送還してこなかった。新型コロナウイルス感染症の問題が起きて以降、個人の最新の健康管理情報をスマートフォンに登録し、それを居住区に入る際にIDとして活用するなど蔓延対策のために個人の移動などの情報管理も徹底している中、アフリカ系の不法滞在者はその健康管理の網をかぶせられない存在になっていた。

 しかし、中国人の命に係わる問題なので、アフリカ系不法滞在者の管理を厳しくしようとしたところ、陽性反応者が逃げ出して行方が分からなくなったというのが実態のようだ。ただ、中国では国内の高速鉄道(新幹線)に乗車する場合でも身分証明書の提示が必要になるため、遠くに逃げることはできないだろうが、香港でも起こったように、これが広州における新型コロナウイルス感染症の流行の第二波につながらないかが心配だ」