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回復のイメージが損なわれるという危惧

 その役員によると、PCR検査で陽性反応が出たアフリカ系の不法滞在者らが逃げたという話は、公式的には発表されていないという。ただ、「最近、知人が広州から昆明に飛行機で移動した際に、空港で地方政府指定のホテルで2週間滞在するようにと隔離の指示を受けた。南部の海南省でも広州からの移動者は隔離対象になった。広州だけに限らず、隣接する深セン市の一部地区も隔離対象になっている」と説明する。

 中国では新型コロナの発生源となった湖北省武漢市の都市封鎖も解除され、人の移動ができるようになった。それに合わせて、「武漢の企業とのやり取りもやっと再開できた。広州の生産拠点はざっと稼働率が50%くらいまで回復してきたイメージ。これから本格回復を目指す局面にあったのに、こうした問題が起こると、再び企業活動が停滞していく」(前出・役員)といった声も出ている。

日本企業も多く進出している広州市 ©︎iStock.com

 米ニューヨークに本部を置く中国語放送の「NTDTV」も、このアフリカ系移民の問題について「4月8日に三元里などでアフリカ系住民に対する警察のチェックが始まり、不法滞在者はアパートの家主から追い出され始めた」と報じている。他のメディアも、広州の警察が飲食店に対してアフリカ系住民にサービスを提供しないように要求したり、アフリカ系住民と接触した地元住民を強制的に検査、隔離していると報じている。

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外交問題に発展「アフリカ差別」への抗議も

 日本のメディアでも、読売新聞が4月16日付朝刊で「広州で『アフリカ差別』」との見出しでこの問題を報じた。それによると、広州市当局が4月4日以降、アフリカ系の在留者4553人全員にウイルス検査を実施、そのうち111人が陽性で19人が発症していたという。検査のために海外渡航歴がない人が隔離されたり、隔離期間を終えた渡航者が再隔離されたりするケースが相次いだという。

 こうした動きが外交問題に発展する気配も見せている。中国駐在のアフリカの一部大使が王毅外相に対して、アフリカ系住民が差別を受けているとの抗議文を送ったほか、ナイジェリアでは同国駐在の中国大使を呼び出して抗議したという。

中国での「第二波」はあるのか…… ©︎iStock.com

 アフリカ諸国は中国が進める広域経済ネットワーク「一帯一路」戦略に参加しているほか、中国がインフラ建設をしている友好国も多い。資源が豊富で人口も多いアフリカを将来の有望市場と考え、中国政府は先手を打って支援し、「貸し」を作っている一面がある。

 また、WHO(世界保健機関)の事務局長でエチオピア出身のテドロス氏の動きが中国寄りとの批判も出ており、米国はWHOへの拠出金に応じない構えを見せている。アフリカと中国の関係に世界の視線が集まり始めている。

 今回の中国の対応がアフリカ諸国との蜜月関係にどのような影響を及ぼすのか、あるいは習近平国家主席がどのような形で収束させるのか、今後も注目されるところだ。