テラスハウスに出演していた女子プロレスラー・木村花さんの死去を受けて、SNSや匿名での誹謗中傷が問題になっている。ところが、そうした書き込みをした個人を特定したり、損害賠償請求を行うことは、法的にも、費用的にも、非常に難しくなっているのが現状だ。
個人で発信者情報開示請求をしたらどうなるのか。権利侵害が認められれば、開示されるのか――。筆者はどうしても我慢ならないことがあり、この手続きを自らやってみた。だが、そこにはビクともしないほどの分厚い壁が立ちふさがっていたのだ。
そんな情報開示請求の顛末をご覧いただこう。
きっかけは著書に対するレビューだった。2020年1月、週刊実話で連載した「男と女の性犯罪実録調書」から、女性犯罪者による事件だけを抜き出した『実録 女の性犯罪事件簿』(鉄人文庫)を出版した。
言われなき誹謗中傷
ところが、発売まもなく30歳の女性から、「無理やり不幸に当てはめたような書き方でなんかうんざりした。できすぎたフィクション小説。文章の書き方に一貫性もない」という書き込みを、読書感想サイトに書かれた。
書き手にとって、読者レビューにひどいことを書かれるのは日常茶飯事だ。もちろん批評の範疇で批判されることに異議を唱えるつもりはない。ただ事実と異なる、あるいは根拠のないネガティブな評価を流布されるのは「言われなき誹謗中傷」だろう。
本書は取材に忠実に基づいて執筆したノンフィクションルポであって、フィクション小説ではない。ところが、困ったことに同サイトにはこのレビューしかない状態が1カ月以上も続き、その間、著書名を検索すると、常にこのサイトが上位に顕出したのだ。
《著者です。「できすぎたフィクション小説」という根拠を示してください。発信者開示請求をした上、法的措置を取ります》
こんな書き込みにも何ら反応はない。
そこでプロバイダ責任制限法4条1項に基づき、サイトを運営する会社に対し、発信者情報開示請求をすることにした。当該レビューはノンフィクションの作品であるのに、フィクション小説を出版しているかのような誤ったイメージを不特定多数人に公開するものであり、著者の社会的評価を低下させる違法な表現である(名誉権の侵害)。よって、損害賠償請求権の行使のために必要であるから、発信者のメールアドレス、発信者が侵害情報を流通させた際のIPアドレス及びタイムスタンプを開示してほしい旨の文面を同社の公式ホームページのメールアドレスに送った。