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「自分はなんて駄目なんだろう」 三浦春馬さんが語っていた“劣等感”と“将来像”

2020/07/21
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ヒット作に主演するも満足感を得られない日々

 地元・茨城県の児童劇団で子役としての活動を始めた彼は、2006年にドラマ『14才の母』でヒロインの恋人役を務め、映画『キャッチ ア ウェーブ』に初主演した。けれども、一躍脚光を浴びることになったこの頃、彼は不安や戸惑いを覚えていた。

「ちょうど子役から成人の俳優に差し掛かった辺りで、まわりの大人たちの言うことを理解したい、でもできないっていう、ただ愛想笑いばかりしている時期だったんです。不安でした。だから自分の居場所はカメラが回っているその瞬間にしかないと思って、そこは本気でやらないと舐められちゃうなと。芝居で認めてもらうしかないような気がしていたんですね。そういうぐじぐじした感じは二十歳くらいまで引きずってたのかな。人懐っこいようでいて、全然人懐っこくなかったんです(笑)」

 2007年の映画『恋空』、2010年の映画『君に届け』など、ヒット作に次々と主演するようになった後も、なかなか満足感を得られなかった。彼は「ある節目で負けて、またある節目で負けてということが続いていた。気持ち的に弱かったんです」と言った。

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©文藝春秋

「内在的な自分の闘いみたいなものを切り取りたかった」

 そんな彼が俳優として大きく飛躍したのが、ALS(筋委縮性側索硬化症)に侵された主人公に扮し、役作りのため約7キロの減量に挑んだ2014年のドラマ『僕のいた時間』だ。彼はこの時、命の限り懸命に生きる青年の姿を全身全霊で演じてみせた。

「筋肉が萎縮していって、徐々に体の自由が失われていく恐怖って計り知れないと思うんです。それでも生きていかなきゃいけないんだということを僕は演じたかったし、内在的な自分の闘いみたいなものを切り取りたかったんですね、あの作品を通じて」

 ちなみに彼はALSについて、あるいは筋ジストロフィーについて学んだことを、付け焼刃ではなく、血肉化した知識として話すことができた。彼はふたつの疾患の違いをわかりやすく説明した。「ALSは筋肉がやせ細っていく症状ですけど、筋ジストロフィーは違っていて、筋繊維がどんどん消滅していってしまうんです。ALSは運動ニューロンの欠乏なんですよね」と。それくらい彼は勉強熱心でひたむきだった。