秋冬に本格的な第2波が訪れる
──なるほど。もしそれが実態だとすると、3~5月には毎日数十人単位で重症者や死亡者が出ていたのに、6月末から7月末の現時点まで、陽性者が増えたわりに重症者や死亡者数があまり増えなかった理由も納得できます。それにしても、もし第1波のときに10倍以上の患者がいたのだとしたら、その頃に比べ現在は感染者が少ないことになりますが、なぜ感染者はもっと爆発的に増えなかったのでしょうか。
徳田 感染者の臨床経過から、感染者数が増えても重症者数は2週間後、死亡者数は1ヵ月後に増加しますので、現時点では安心できません。ただ、私は、湿度と温度が上がったことと、紫外線の影響が大きいと考えています。つまり夏だからです。呼吸器感染症を引き起こすウイルスの活動は、夏が近づくにつれて、減っていくことが多い。私が住んでいる沖縄では、米軍基地であれだけ多くの感染者が出ているのに、現時点では県内で感染爆発は起こっていません。米軍基地のゲートは封鎖されておらず、今でも米兵たちが毎晩のように出入りしているにもかかわらずです。今日も、沖縄はとても暑いですよ。
しかし、夏を過ぎて秋冬になってくると、またウイルスの勢いがぶりかえしてくる恐れが高いと思います。私は、現在の感染拡大は第1波のくすぶりだと考えています。このくすぶりを小さなうちに消しておかねばならなかったのに、残念ながら消火に成功しなかった。出口戦略の失敗です。このまま放置していると、秋から冬に入って本格的な第2波が訪れるでしょう。感染者が減ったとしても、警戒は緩めてはいけません。くすぶりからそのまま感染爆発に移行する可能性もあります。
「GO TOトラベル」は中止しなくて大丈夫?
──実態は違うかもしれませんが、公表される陽性者数は第1波を超えています。それなのにどうして「緊急事態宣言」を出さないのか、どうして「GO TOトラベル」を中止しないのかと、疑問に思う人もたくさんいます。
徳田 自粛要請せず、GO TOトラベルを許しているのは、感染爆発ではまだない、とみているからなのでしょう。感染率と致死率が思ったほど高くないと政府が評価したこともあるかもしれません。致死率を細かくみると、乗客全員をPCR検査したダイヤモンド・プリンセス号の致死率(陽性者数中の死亡者数の割合)は約1.5%だったのですが、乗客は高齢の方が多かったので、年齢構成を日本の人口分布に合わせて当てはめると0.5%程度になります。しかし、これでも季節性インフルエンザより何倍も高いのです。
ところで、第1波の時期の死亡者数を陽性者数で割った致死率は5%くらいでした。これはダイヤモンド・プリンセス号の0.5%の10倍です。つまり本当は分母(陽性者数)が実態の10分の1になっていたから、致死率が10倍も高く見えていたと考えられるのです。ちなみに、武漢のデータでは致死率は1%でした。