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「酒が残っているとは思わなかった」で通せばOK?

 警視庁担当記者が説明する。

「山口容疑者は送検後、少し供述を変えたのです。当初は『酒が残っている自覚はあったが、事故さえ起こさなければ大丈夫だと思った』という趣旨の供述でしたが、検察側の調べには『体に酒が残っているとは思わなかった』などと話したのです」

2018年、会見に応じる山口達也容疑者 ©文藝春秋

 飲酒したことや運転したこと自体は認めており、大した変遷にもみえない。弁護人も「被疑事実を認め、逮捕後一貫して、自己の記憶に従い誠実に真実を供述し、最大限捜査に協力しております」と説明しているが、その後もさらに供述が変遷した可能性もあり、当局がこの変遷に敏感に反応する理由は十分過ぎるほどある。

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「自覚」の有無は事件成立のカギを握るからだ。

 道交法が定める飲酒運転は、故意でなければ成立しない「故意犯」。たとえ飲酒して運転したことが事実として認定されても、当人が飲酒した状態だったことを認識していなければ、無罪の可能性が残るのだ。

 とはいえ、今回の事件は飲酒運転。通常なら押さえる証拠もあまりない。

 問題は、山口容疑者が「自宅でひとりで酒を飲んだ」などと供述している点だ。飲酒運転で裏付けが必要な証拠は酒を飲んだ量。居酒屋で飲んだのであれば、店の伝票や周囲の客の話から裏付けは取れるが、自宅でひとり酒となれば、スーパーなどでのアルコール類の伝票のほかは、自宅に残った酒瓶などが数少ない証拠になる。